農業水利施設の事故防止について

【平成19年9月25日ラジオ放送】

担当者:福島県農林水産部(農村整備領域) 農地管理グループ主任 主査 柳沼 正一
司会者:RFCアナウンサー

司会者

農業用水利施設の事故防止ということですが、農業用水利施設とは、どんなものをいうのでしょうか。

担当者

農業用水利施設といいますのは、田んぼや畑のための水を取水したり、排水したりするための施設のことで、

  • 農業用水を貯めるためのダムやため池
  • 川から水を取り入れるための頭首工
  • 大雨などで田んぼが浸水するのを防ぐためポンプで水を排水する排水機場
  • 田んぼに水を取り入れるための用水路
  • 田んぼからの水を流すための排水路 などのことをいいます。

司会者

このような施設にはどのような事故が起こっているのでしょうか。

担当者

つい先日、今月の7日のことですが、福島県を縦断した台風第9号に伴う大雨がありましたが、県内の農林水産業関係では大雨による田畑の冠水や果樹の落下など、多額の被害が発生しました。幸いにも、県内では大きな人的な被害はありませんでしたが、このような大雨の時は、水路の水かさが増して危険な状況になり、水路やため池へ転落して死亡するという人命に関わるような事故が起こりやすくなります。実際に、全国では毎年のようにこのような人身事故が多数発生し、尊い命が失われており、非常に残念なことであると思っております。

司会者

確かに、水路など転落して亡くなったといった事故を聞きますが、どうしてこのような事故が起こってしまうのですか。

担当者

水路やため池というものは昔からあったわけですが、近年、田んぼの周辺に農家以外の一般の住宅などが建つようになってきたこと、昔は水路といえば土の水路であったものですが、最近はみんなコンクリートの水路となってきて、その結果として、水の流れが速くなって、事故の危険性が増してきていることも原因の一つかと思われます。
水は田んぼにはなくてはならないもので、水路には、田植えの時期から刈り取りまでのたえず水が流れています。特に大きな水路のような場合は、深さが1メートル50センチを超えるものもあり、水の流れがとても速く、多くの水が流れていますので、大人でも流されて脱出できないということがあるくらいで、小さなお子さんや高齢者にとっては特に注意が必要な施設です。

司会者

水路やため池の事故を防ぐためにはどのようなことが必要ですか。

担当者

こういった事故を防ぐための対策についてですが、まず、小さなお子さんの場合ですが、お子さんが水路やため池の近くで遊んでいるうちに、誤って転落してしまったといった事故があります。そこで、子どもが水路やため池の近くなどで遊んでいるのを見かけられましたら、親でなくとも見かけた人誰でもいいですから、一言注意してあげることが大切です。また、子どもが遊んでいては危ないと思われるような場所については、学校や地域で点検をしたり、それらの危険箇所を子どもに知らせて注意させるといった、農家だけでなく地域ぐるみの啓発活動が重要かと思われます。
次に高齢者の場合ですが、最近は、若い人が勤めに行っていて、田んぼの見回りをするのは高齢者といったことが多くなっています。そこで、雨が降ってきて心配になって田んぼを見に行く途中や見に行った帰りに、誤って水路に転落してしまうといった事故が多く発生しています。これは、雨の勢いで水路の水かさが増えていたり、あぜ道がぬかるんでいてとても滑りやすくなっていたりと、危険が多いためです。田んぼが心配になる気持ちは分かりますが、大雨が降ったら出歩かない、出かける場合も出来るだけ一人でなく他の誰かと一緒に行くなどの注意をお願いしたいと思います。

司会者

その他に危険なことはありますか。

担当者

ダムの場合ですが、大雨で水かさが増したときなどに、ゲートを開けて下流の川に水を流す場合がありますが、この放流によって川の水位が上昇し中州にいた人が流されたり、取り残されたりすることがあります。ダムで放流する場合には、事前に警報を鳴らすこととなっています。警報が鳴った段階で避難していただければよいのですが、ときどきニュースでも流れますが、川の上流で大量の雨が降っても、下流ではたいして雨が降っていないようなケースでは、警報が鳴っても避難しない人がいて、中州に取り残されてしまうというようなことがあります。川の水位は一気に上がりますので、自己判断をせずにきちんと避難をしていただくようお願いします。

司会者

水利施設を管理している人は、事故防止のためにどのようなことをすればよいのでしょうか。

担当者

農業用の水利施設を管理している方々、大きくは市町村や土地改良区などの団体、具体的には地元で管理されている集落の役員さんにお願いがあります。管理している人はどうしても施設の利用ということに目が向きがちですが、事故防止という点にも十分注意していただきたいということです。土地改良区などの団体には、安全管理施設の整備、具体的には、ため池の廻りに注意喚起の看板を設置したり、大きな水路に転落防止用の柵やネットを設置したりすることや、万が一の事故に備えて保険に加入するなどの対策をお願いします。集落の役員さんには、これらの施設を計画的に巡視や点検をしていただき、不備なところがないかどうか確認し、危ないようなところが発見された場合には、市町村や土地改良区などに連絡いただきたいと思います。また、地域に住んでいる小さなお子さんや高齢者を含めた一般の方々に、どこにため池や大きな水路があるのか、それはどのように危険なのかといったことを知らせていただきくなどの向けた取り組みをお願いいたします。
最後になりますが、これからもまだ、台風が上陸することもあるかもしれませんし、秋雨前線の活動で大雨が降ることもあるかと思います。そこで、施設を管理している方々だけでなく、一般の方々も含めて、農業用水利施設のことを十分理解し、事故防止につなげていただければと思います。皆様の御協力をよろしくお願いします。