「土地改良施設の維持管理」について

雄国山麓土改区

【平成19年12月30日ラジオ放送】

担当者:雄国山麓土地改良区 事務局長 佐瀬 義弘
司会者:RFCアナウンサー

司会者

農家の皆さん、おはようございます。
今朝の「土地連だより」は、雄国山麓土地改良区 事務局長の佐瀬義弘さんに、土地改良施設の維持管理について、お話をお伺いします。
はじめに、雄国山麓地区の概要について、お話をお願いします。

担当者

当地区は福島県・会津北部地方の磐梯山から西に連なる雄国山の麓に位置し、喜多方の町並みを眼下に見下ろして、県境の飯豊連山を望む大変風光明媚な、稲作中心の中山間・農村地帯であります。このため国立公園の裏磐梯をはじめ、高山植物の宝庫となっている雄国沼への出入口となっているため、近年グリーンツリズムが発展して、都市部中学生を中心に毎年4千人を超える人々が農業体験を実践して、ラーメンと共に話題に事欠かない地域となっています。
当土地改良区は、喜多方市と北塩原村に跨り、915ヘクタールの受益地と組合員820名で構成し、平成4年度完了の国営総合農地開発事業で造られた大深沢調整池やパイプラインの幹線用水路、揚水機場を主体とする基幹施設を維持管理して、地域の田や畑に安定したかんがい用水を供給しております。

司会者

国営事業によって数々の施設が造られ、安定した農業用水を雄国山麓地区に送っていることですが、まず、その国営総合農地開発事業の内容についてお話しをお願いします。

担当者

農林水産省所管の国営事業は、八郎潟や有明海の干拓、大柿ダムや日中ダムなどの大規模かんがい排水事業が一般的ですが、当地区は山林・原野を開拓して畑を造る農地開発事業をメインにダムや道水路を併せて総合的に造成する事業で、昭和46年から施工されました。通称、国営開拓パイロットよばれ、狭い棚田が整形され、新たな畑が開墾されて農家経営の基盤となる農地の規模拡大がはかられ、幹線道路等総合整備により地域周辺の環境が一変する大プロジェクト計画に、地域発展を願って受益者共々一日も早い事業の完成を待ち望んでおりました。
しかし国営工事は22年もの歳月と228億円の事業費を費やして完了しましたが、この間に開田抑制策、オイルショック、輸入交渉、作付け調整など、米を中心とする農業情勢が目まぐるしく変遷し、昨今の米価下落影響を加えて、益々組合員農家の生活を圧迫しております。加えて国営事業の返済金は軽減対策を行 なって15年が経過しますが、まだ20年間も残されており、受益者と共に改良区も厳しい財政状況が続いて、残念ながら事業の成果が中々見えにくい状況となっております。

司会者

土地改良事業には色々なご苦労があると思いますが、地域組合員の方々や改良区の皆さんに、是非、喜ばれる事業となって頂きたいものです。
それでは、続いて地域の水源となる大深沢調整池の維持管理について教えてください。

担当者

従来、本地区の水源は雄国沼をはじめとする山間の渓流から自然かんがいを行なってきましたが、551ヘクタールの区画整理に加えて350ヘクタールの農地造成が施工され、その畑にスプリンクラーを使用可能とする給水栓を各圃場に設置しております。このため安定的な農業用水と新たな畑地かんがい用水を確保するため、隣接する喜多方市塩川町中屋沢地内に、大深沢調整池が造られました。
この調整池は阿賀川水系日橋川に注ぐ1級河川・大深沢川を堰きとめたゾーン型フィルダムで総貯水量72万トン、内有効貯水量25万トン、堤頂158メートル、高さ37メートルの利水専用のアースダムとなっております。
ダムの操作管理は東北農政局から幹線用水路や揚水機場と共に管理委託され、気象や雨量・放流量等の観測や施設機器の点検をはじめ、ダムの貯水規模が小さいため、猪苗代湖を水源とする東京電力猪苗代第4発電所から、日曜日を除く週6日間にわたり、専用導水トンネルから毎日流量制御を行なって、ダム水位の維持を計っており、小さなダムの割りには国土交通省の定期検査が必要な重要な施設となっています。
また近年は異常気象により大雨洪水、地震等自然災害が頻発しており、昼夜を問わず気の緩めない管理体制が続いており、安全対策の啓蒙と監視を強化しております。

司会者

昼夜のダム管理、ご苦労様です。
ところで、ダムや土地改良施設には本来の目的の他に、地域の洪水防止をはじめ、親水機能、生態系保全など多面的機能による様々な効用があると言われますが、今後の課題を合せてお聞かせ下さい。

担当者

大深沢ダムは塩川町から車で10分の距離にあり、磐越高速ICへのアクセス県道の近道として、積雪期も容易に通行可能となったため、新たな自然景勝地として、多くの人が訪れるようになりました。
現在、湖面には鴨などの渡り鳥が多数飛来して、寒い中ですが人々を和ませています。
春になると、魚釣の穴場としてプロをはじめ、生徒や家族が連れ添って湖岸に戯れます。
一方で訪問者が放置した弁当クズや飲料水の容器、タイヤなどの不法投棄物が湖畔に散乱したり、取水ゲートに絡まったりして、この除去と訪問者の安全啓蒙に大変苦労しております。
地元中学生によるゴミ収集、清掃活動や花壇を設置して周辺美化に努めておりますが、とても手が足りない状況です。
調整池の環境を守るためには、まず地域住民の理解と意識を高める啓蒙やイベントが必要で、管理協議会を設置してパンフレット配布やアンケートを実施して、多面的啓蒙看板を作成したり、ナデシコやパンジーの鉢花を管理の合間に育苗して、農業まつりのイベントや施設周辺に活用しておりますが、是非、ボラン ティア組織を立上げて定期的な清掃と花壇植栽運動を定着させたいと考えております。
今後は組合員の兼業化や高齢化が益々増加し、施設の管理能力低下やコストが高まる傾向の中で、地域の要となる土地改良区の役割や重要性を農家ばかりでなく地域住民や企業の方々に広く理解を促して、調和した土地改良事業を進めてまいりたいと思います。

司会者

地域全体で進めることが、なにより必要な訳ですね。
ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは、土地改良施設の維持管理について、雄国山麓土地改良区事務局長の佐瀬さんにお話を伺いました。