農業水利施設の維持管理について

【平成28年5月26日ラジオ放送】

担当者:福島県農林水産部農地管理課 主査 落合 真澄
司会者:RFCアナウンサー

司会者

農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、農業水利施設の維持管理について、ご紹介します。
お話は、福島県農林水産部農地管理課で農業水利施設の管理を担当していらっしゃいます落合さんに伺います。
まず、農業水利施設とは、どういうものをいうのでしょうか。

担当者

皆さん、おはようございます。
ではまず、農業水利施設について、説明します。農業水利施設というのは、水田や畑に使う水を取水したり、排水したりする施設のことで、
・農業用水を貯めておくダムやため池
・川から水を取り入れるための堰
・水田に水を取り入れたり流したりする用水路や排水路
などのことをいいます。県内には、こうした農業水利施設が約7,000施設あります。こういった施設は、水田や畑の灌漑用水を安定して供給し、農産物の品質と収量を確保する上で、とても大切な施設となっています。

司会者

7,000施設もあるのですね。私たちのまわりには、たくさんの農業水利施設が存在しているということですね。こんなにたくさんの施設は、どのように管理されているのでしょうか。

担当者

農業水利施設は、主に市町村や土地改良区という組織で管理していますが、施設を利用する地域の皆さんも管理に携わっていることと思います。
実は、多くの農業水利施設が、戦後の高度経済成長期に整備されました。そのため老朽化が進んでいます。また、農業に携わる人が減ったり、農村の都市化や混住化など施設周辺の地域の変化もあり、地域における農業水利施設の管理は年々難しくなっています。

司会者

そうですか。しかし、管理が難しくなってきているといっても、農業水利施設は農作物を生産するために必要不可欠な施設だと思います。県ではどのような対策を進めているのでしょうか。

担当者

はい。先ほどお話しましたように、約7,000もの施設を管理しているのは、市町村や土地改良区となっています。老朽化が進んでいる施設が多くなっているのですが、管理者である市町村や土地改良区も人出だけでなく、財政事情も厳しいということで、施設を新しく造りかえることが難しい状況です。そこで県では、「壊れてから直す」のではなく、「壊れる前に予防保全的な整備補修」ということを進めておりまして、定期的に必要な施設の整備補修を行う土地改良区に対し公的な助成を行う、「土地改良施設維持管理適正化事業」という事業を、約40年前から紹介しています。整備補修はもとより、施設の管理者の皆さんに施設の維持管理に対する意識を高めていただき、施設の機能を保ちながら、耐用年数の確保もしていきたいと考えております。

司会者

今、お話の中であった「土地改良施設維持管理適正化事業」では、どんなことができるでしょうか。

担当者

実際に事業が活用されている施設のうち、多くは揚排水機場と水路になりますので、この2つの施設について説明します。揚排水機場では、ポンプや原動機などの分解整備、電気部品の交換などが挙げられます。水路では、目地の補修・改修、水門などの塗装、水門開閉巻き上げ機の整備、そして安全柵などの設置が挙げられます。特に、最近は集中豪雨が多発しており、市街地を通る水路などは、地域住民の安全確保の面でも整備補修が重要であると思っています。

司会者

本当に、ここ数年の集中豪雨は怖いですよね。施設の機能の維持だけでなく、環境や地域の変化なども含めた対策が必要なのですね。

担当者

そうですね。水門の開閉操作を手動で行っていた施設において、改修する際に電動式に切り替え、危険水位を感知する水位センサーを設置した、という事例もあります。この事例は、昭和40年代に造成された水門の改修で、腐食が進み、巻き上げ機も老朽化していたことから、開閉作業に苦慮していたため、この事業を活用して、水門設備の改修を行ったわけですが、水位センサーを設置するなど安全面の確保にも取り組んだ事例です。他にも、事業を活用して、夜間や雨天でも安全安心な監視ができるように作業架台や手すりを設置するといった改善を行った施設もあります。

司会者

施設を管理される皆様には、安全安心な管理を進めるうえでも、整備補修を考えていただき、またこの事業を活用していただきたいですね。
では、実際に事業を活用したい、となった場合、どのような手続きが必要でしょうか。

担当者この事業は一般に知られる補助事業とは異なりまして、整備補修に必要な資金を積み立てることが必要になります。整備補修を行う土地改良区などが整備補修に必要な費用の30%を出し、これに県の補助金として30%、国の補助金として30%が加算され、合計90%分の費用を全国土地改良事業団体連合会が「土地改良施設維持管理適正化資金」として造成するものとなります。土地改良区はこの事業に「加入」して、整備補修に必要な費用の30%の額を5年間均等に積み立てていく仕組みとなっています。そして積み立て期間である5年の間に整備補修を実施することになるわけですが、実施する際には費用の90%が「土地改良施設維持管理適正化資金」から交付されることとなります。残りの10%は自己負担となります。ですので、実質的に土地改良区の負担は40%となりますが、この分について、補助をしている市町村もあります。
また、事業に加入するに当たり、あらかじめどんな整備補修が必要なのか、診断を実施します。この診断は、土地改良区といった団体からの要請のもとに、福島県土地改良事業団体連合会が実施してまして、その結果により、加入するかどうかを検討します。
加入要件としましては、1地区200万円以上となる整備補修となりますが、毎年実施するような整備は対象外となります。
まずは、事業の加入団体となる土地改良区もしくは関係市町村へご相談ください。

司会者ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは、農業水利施設の管理について、福島県農林水産部農地管理課で、施設管理のご担当の落合さんにお話を伺いました。