東日本大震災からの復旧に向けた取組について
【平成28年8月24日ラジオ放送】
担当者:福島県農林水産部農村基盤整備課 主査 紺野 恭子
司会者:RFCアナウンサー
司会者
農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、「東日本大震災からの復旧に向けた取組について」福島県農林水産部 農村基盤整備課 紺野 恭子さんにお話しを伺います。よろしくお願いします。
担当者
おはようございます。よろしくお願いします。
司会者
紺野さん、東日本大震災では、どのような被害があったのでしょうか。
担当者
津波によって、浜通り沿岸の農地や農道、農業用水路などが被災しました。海岸堤防が壊れ、高潮対策などのための防潮ゲートが壊れ、農地などに堪った水を海まで吐き出す排水機場も被災しましたので、干拓地など沿岸部低地で排水困難な状況が長期間、続きました。
ほか、会津地方で最大震度6弱、中通り・浜通りで最大震度6強の強い揺れにより、ダム・ため池が被災し、農村地域の下水道である集落排水施設の管が壊れ、液状化現象によりマンホールが浮上するなど、大きな被害を受けました。
司会者
農地と農業用施設に多数の被害があったわけですが、具体的にはどれくらいの被害がありましたか。
担当者
農地では、津波による被災のほか、地震により斜面が崩落し、亀裂が発生するなど5,591haの被災があり、935億円の被害がありました。
海岸保全施設は、県農林水産部で管理する20kmのうち16.7kmが被災し、排水機場は沿岸6市町に設置された43個所のうち41個所が被災しました。
ダム・ため池では県内全体の3,730個所のうちその約20%にあたる745個所で被災しています。
これらの農地・農業用施設の被害額は、合計で2,300億円にのぼっています。
司会者
大変な被害ですね。では、どのように復旧を進めているのでしょうか。
担当者
被災当初は、津波被災を受けた沿岸部では、干拓地や地盤沈下した低地に海水が湛水していましたので、県土木部や国土交通省、農林水産省と連携し、海水の排除に取り組みました。
同時に、地域住民の皆さんの生活に必要不可欠な下水道の処理を行う農業集落排水施設の復旧のため、市町村と一体となって復旧を進めました。
ダム・ため池は、大規模なものは県で、比較的小規模なものは市町村で復旧することとして、市町村とともに復旧を進めてきました。
司会者
浜通りの復旧は、いまだ道半ば、と言えるでしょうか。
担当者浜通りの津波被災に関しては、今後の土地利用の見込みを踏まえて、復旧方針を決定する必要があり、農家の皆さんをはじめ、住民の意向を確認しながら復旧事業を進めていることもあり、復旧完了までには時間がかかります。
将来の防災減災を見据えた復興計画とするため、南相馬市にある県相双農林事務所では、海岸防災林や県道の嵩上げ、集団移転事業等の復旧復興事業と連携、調整を図りながら、地元の農家さんへの説明会を開催し、意見を交わしながら、復旧事業を進めています。
農家の皆さんには、生活再建に多忙なところ、農地をどのように復旧していくか、地域の意見をまとめて頂いています。
被災の程度の大きい場所、亡くなられた方・行方不明者・避難者の多い地域では、担い手の確保がこれまで以上に困難となりましたので、一層の担い手農家への集積、農地の大区画化を図らなければならず、そのための基盤整備事業を実施しているところです。
この事業は、平成24年度より実施しており、これまで11地区、1,652haが採択され、平成31年度完了を目標に工事を進めています。
このうち、9地区427haで営農を再開しました。来年春には、11地区で約1,000haまで増える見込みです。
司会者被災前と同じように戻すだけでなく、将来の土地利用を見据えた復旧復興を進めている、ということですね。
ほかにも、原発事故の影響があるかと思います。
担当者原発事故により避難指示区域となったところについても、順次、復旧計画を立てているところです。先月12日に避難指示が解除された南相馬市小高区では、小高東部地区などで大区画化を図るべく事業を計画していますが、そのほかにも地元農家さんとの意見調整を進めている地域があります。
ただし、帰還困難区域では被災状況の把握に至っていないところも多い状況です。
今後とも、避難指示区域の見直し状況に合わせて、実施可能な地域から順次、復旧復興事業を進め、営農再開を目指して行きたいと考えています。
司会者最後に、海岸堤防や排水機場の被災があったということですので、現在の復旧状況について教えてください。
担当者
海岸堤防や波消しブロックなどの海岸保全施設は、帰還困難区域を除く16.7㎞で災害査定を受け、全16地区のうち、6地区が完了し、今年も北海老地区など3海岸で工事完了する予定です。
堤防高については、標高6.2mから高さ1mもしくは2.5mの嵩上げをしています。
排水機場は37地区で災害復旧事業を実施しますが、27地区で完了、今年度には3地区が完了する予定です。
これらの復旧事業のため、国や全国自治体から昨年度末まで1,453名の農業土木技術系職員の派遣支援を受け、今年度も11道県22名に来て頂いており、熊本地震で被害を受けた大分県からも支援を続けて頂き、大変ありがたく思う一方、一刻も早く復旧し、豊かな農業農村の復興・再生に向け、頑張らなければならない、と思います。
司会者現在も、全国から支援があるのですね。ありがとうございました。
まだ道半ば、ということで大変だと思いますが、県の農業復興に向けて頑張って頂きたいと思います。
今朝の土地連だよりは、「東日本大震災からの復旧に向けた取組について」福島県農林水産部 農村基盤整備課 紺野 恭子さんにお話を伺いました。