愛谷堰土地改良区の農業水利施設における地域住民参加型直営施工工事の取組について

【平成29年6月28日ラジオ放送】

担当者:福島県土地改良事業団体連合会総務企画部企画指導課 課長 菊地 勇一
司会者:RFCアナウンサー

司会者

おはようございます。「農家の皆さん」の時間です。
今朝の土地連だよりは、水土里ネット福島総務企画部企画指導課長 菊地勇一さんにお伺いします。菊地さん、おはようございます。

担当者

おはようございます。

司会者

今朝のお話は、「愛谷堰土地改良区の農業水利施設における地域住民参加型直営施工工事の取組」について、ご紹介します。初めに、愛谷堰土地改良区さんについてお話をいただけますか。

担当者

はい。愛谷堰土地改良区は福島県浜通り地方南部のいわき市平を中心とした夏井川右岸に位置する平坦部水田地帯を受益地としています。
そして、土地改良区が管理する愛谷頭首工と、いわき地方で古くから「江筋(えすじ)」と言われる水路の開削は、江戸時代の初期に完成したと伝えられており、夏井川左岸の小川江と共にいわき地方において最も古く、かつ大規模な施設となります。
現在利用されている農業施設は、昭和30〜50年代にかけて造成され、老朽化が進んでおりますが、農業従事者の減少、高齢化等による維持管理の低下、また施設整備のための補助事業予算の確保も難しいなど、対応に厳しい状況にあります。
そのような中、土地改良区は施設の適正な管理を進めるため、高度な施設機械の工事以外は住民参加の直営施工工事を適切な時期におこないながら、施設の長寿命化を図っています。

司会者

地域住民が参加する直営施工とは、どのような工事なのでしょうか。

担当者

工事の直営施工は、建設会社など”プロ”に工事を発注する請負と称する従来型の工事と異なり、土地改良区が主体となり、農家を中心とした地域住民が作業員となって工事の施工をおこないます。
住民は農家・非農家に関わらず、生活する中で、農道、水路を利用しており、それらの維持管理、直営施工工事には地域住民が一丸となって参加するように指導していることから、土地改良区の直営施工には、年間延べ500〜700名の地域住民が参加しているとのことです。
これまで幹線水路の表面保護、U字溝の布設、ため池施設の改修など多くの直営施工工事に取組んでいます。

司会者工事というと建設会社がおこなうというイメージがありますが、“プロ”ではない地域住民の方が工事施工をすることで、心配はないのでしょうか。

担当者

愛谷堰土地改良区では直営施工における品質及び安全性の確保、コスト縮減を目指し、土木業者同等の工事積算や各種資格を修得して、現場管理にあたっており、また、土地改良区では平成10年から直営施工工事を実施しており、多くの実績を重ねてきたことで、危惧されます品質、安全の確保、施工管理、コスト縮減などの問題はありません。
特に安全の確保には、作業員の安全作業への徹底した教育が必要であることから、理解するまで指導をしているとのことです。
コスト縮減においても、施工管理や作業手順の効率化が重要であることから、日々、作業員と打合せをおこない、また直営施工工事を行うことで、工事を業者に発注した場合に生じる一般管理費などの費用が節減できます。
それから、作業員は農家を中心とした地域住民であり、工事に参加することで雇用の創出と非繁忙期を利用した農家の所得向上に寄与しているという面もあります。
この直営施工工事への長年の取り組みにより、災害時の緊急工事が迅速に行える体制が構築され、東日本大震災では、物資調達や人員確保が困難な状況の中、独自に物資を調達、人員も確保して早期の復旧ができたと聞いています。
また、住民が共同で作業をすることで地域コミュニティが活性化され、完成施設への愛着がわき、自分達の施設、地域財産であるという認識が根付き、維持管理に対する住民の協力へ繋がっています。
それから、大半の地域住民が直営施工に参加しているので、施設の異常があった場合、発見・通報が迅速に行われているそうです。

司会者

地域住民の皆さんが参加する直営施工工事の内容とその効果がよくわかりました。
ところで、今年4月に国がおこなった、「第1回インフラメンテナンス大賞 農林水産省案件」で、愛谷堰土地改良区さんが優秀賞を受賞されたとのことですが、「インフラメンテナンス大賞」についてお話ください。

担当者

この「インフラメンテナンス大賞」は、農林水産省を含む6つの関係省が連携し、公共施設などインフラの維持管理で優れた取り組みを表彰し、今日、インフラ施設の老朽化が進む中、低コストで維持管理を図る効果的な手法を広め、各地で役立ててもらうことを目的に昨年、創設されました。
その第1回目の「大賞」で、愛谷堰土地改良区が農林水産省のメンテナンス実施現場における工夫部門で優秀賞を受賞しました。
今回の受賞は、地域の財産である土地改良施設の保全のため、土地改良区と地域住民が一体となり、継続的に直営施工工事に取り組んできた長年の成果が、評価されたのだと思います。

司会者

今朝は、ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは、愛谷堰土地改良区の地域住民参加型直営施工工事の取組について、お話しを伺いました。