「農業水利施設の管理」について
【平成22年4月23日ラジオ放送】
担当者:福島県農林水産部 農地管理課 主任主査 渡邉 伸一
司会者:RFCアナウンサー
司会者
農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、農業水利施設の管理についてご紹介します。
お話は、福島県農林水産部農地管理課で農業水利施設の管理を担当していらっしゃいます渡邉伸一さんに伺います。
渡邉さん、はじめに農業水利施設とはどのようなものをいうのでしょうか?
担当者
はい。
農業水利施設というのは、水田や畑に使う水を貯めておくダムやため池、河川から水を取り入れるための堰、水田に水を汲み上げるためのポンプ場、農地を洪水から守るための排水ポンプ場、水田に水を引くための用排水路などのことをいいます。
司会者
その農業水利施設は、県内にどのくらいあるのですか?
担当者
はい。
ダムやため池だけで約3千7百ありまして、それ以外のポンプ場などの施設を合計すると、約7千施設もあります。
また、主な用水路、排水路だけでも、県内に約1千キロメートルあります
農家の皆さんにとっては、なくてはならない施設であり安定的な食料供給には欠かすことのできない、重要な社会資源といえます。
また、地域住民の方々にとって、ダム、ため池、水路は、憩いの場になっていることも多いと思います。
司会者
私たちのまわりには、安定的した営農をするために必要な農業水利施設がたくさんあるということですね。
それでは、これらの施設を維持管理していくうえで、どのように取り組んでいるのか、お話をお願いします。
担当者
はい。
たくさんの農業水利施設は、主に土地改良区や水利組合が管理しています。
これらは、造ってからかなりの年月を経過している施設が多く、老朽化が進んでおりますが、厳しい財政状況から、すぐに全てを新しくすることはできません。
そこで、施設を長持ちさせ、次に造り直すまでの期間を延ばし、全体のコストを低く抑えるための仕組みづくを行いました。
管理者の方々が、それぞれの施設の実態を点検によって把握し、壊れてから直すのではなく、壊れる前に計画的に予防保全的な整備補修をおこなうなどの対策を実施していくというものです。
これにより、施設を長持ちさせて、有効活用を図るというものです。
司会者
車に例えれば、新車に買い換える余裕が無いので、計画的に部品交換や手入れをしっかりおこなって、なるべく長く乗り続けるということですね。
担当者
はい。おっしゃる通りです。
司会者
さきほど7千もの農業水利施設があるとおっしゃいましたが、たくさんの施設を点検するということですね。
なにか、工夫されている点はあるのですか。
担当者
はい。これだけの数の施設を点検するわけですから、施設を管理されている方々はもとより、地域の方々のご理解とご協力の必要だと考えています。
その施設点検にあたり地域住民や農業水利施設の役割を広く分かっていただくため毎年、水を使い始める前の4月を「施設管理強化月間」に位置づけて、PRに努めています。
また、4月とは限りませんが、県内の農林事務所毎に施設見学会や学習会などを開催し、毎年地域の方々や子供たちの参加を得て好評を博しています。
司会者
4月ですと、白河市の田町大堰幹線排水路での一斉清掃活動や大熊町の坂下ダムでの清掃活動などを、農家でない方も含めて実施しています。
また、7月には福島市で地元小学生を対象に「西根上堰(うわぜき)及び水路トンネル施設見学会」を開催する予定です。
ゴムボートに乗り、水路トンネルの中を通るというイベントも含まれており、子供たちに人気のある見学会です。
その外の方部でも、ダムの見学会、水路の学習会や清掃活動を開催する予定となっております。
ラジオをお聞きの皆様で、イベントに関心をお持ちの方は、県庁農地管理課もしくは、各農林事務所へお問い合わせいただければ幸いです。
司会者
そのほか、施設管理を担当しているうえでご苦労なさっている点はありますか。
担当者
はい。
これから、ますます暖かくなってきて、水に親しむ季節がやってきますが、毎年おきてしまう事故についてです。
司会者
どのような事故なのでしょうか。
担当者
はい。
もっとも多いのは、水路やため池に転落してしまう事故です。
県内でも、子供が遊んでいて、ため池に転落して亡くなる事故や、ため池の管理者が、管理中に転落して亡くなるといった事故です。とても残念なことです。
司会者
何か、注意するようなことはありますか。
担当者
はい。
まず、子供さんが、水路やため池周りで遊んでいるのを見かけましたら、一言注意してあげてください。
さらに、これから農作業が本格化するわけですが、農家の皆さんも、ため池を管理の際は、できるだけ複数の方々で行うといった注意が必要です。
また、管理者の皆様には、注意看板の設置や危険箇所へ、進入禁止の措置をとるなどの安全管理をお願いします。万が一の事故に備えて、ため池や水路などの施設そのものにかける保険がありますので、積極的に加入していただきたいと思います。
集落の役員さんには、これらの施設を計画的に巡視や点検をしていただき、不備なところがないかどうか確認し、危険な箇所が発見された場合には最寄の市町村や土地改良区などに相談していただきたいと思います。
司会者
そのほかに何か、ありますか。
担当者
はい。
さきほど、地域住民の方々にとってダム・ため池などは憩いの場になっていると申し上げましたが、心無い人たちが捨てたゴミを拾うのは農家の方々です。
最近は、農家の方々も高齢化しており、施設管理に大変苦労しています。
ゴミは捨てずに、持ち帰るようにしていただきたいものです。
司会者
ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは、農業水利施設の管理について、福島県農林水産部農地管理課で、施設管理を担当しております渡邉伸一さんにお話を伺いました。