「平成22年度福島県の農業農村整備事業の概要」について

【平成22年5月29日ラジオ放送】

担当者:福島県農林水産部 農村計画課 主幹 後藤 庸貴
司会者:RFCアナウンサー

司会者

農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、平成22年度福島県の農業農村整備事業の概要などについて、ご紹介します。
お話は、福島県農林水産部に勤務しております、農村計画課の後藤庸貴さんにお伺いします。
まず始めに、農業農村整備事業とはどのようなものであるか、教えてください。

担当者

農業農村整備事業は、少し前までは土地改良事業と呼ばれてきました。農家の皆さんも土地改良事業と言われたほうがピンとくるのでは無いかと思います。
土地改良事業というのは、学問や技術の面では農業土木と言われていますが、この歴史は私たちの祖先が日本列島に住み着いて、狩猟採取の時代を経て農耕を開始た時代に始まったと言われています。
昔は、米や野菜などは自給自足でしたが、人口が増えるに従って農作物の消費量が増えてきます。小さく不整形で排水の悪い水田や、たびたび起こる水不足などによって生産力が上がらず、手間ばかりがかかり、生産費がかさんでくるという状況になってきました。このために、これらを解消して、農業経営の合理化を図りながら、農業生産力を高めていこうということで昭和24年に土地改良法という法律が定められました。それ 以降、この法律に基づいて、ダムや水路の建設・整備、ほ場整備などの様々な土地改良事業が進められて来ました。
現在では、食料自給力を高めて食料を安定的に供給するための生産基盤の整備のほか、農業集落排水に代表されます、農村地域での生活を快適な生活のための、生活環境の整備についても行われています。

司会者

一口に農業農村整備事業といっても、様々な事業を含んでいる事はわかりましたが、福島県ではどのような方針で、これから進めていくのでしょうか。

担当者

はい。福島県ではこれからの農林水産業をどのような形で進めていくかにつきまして、今年3月に「生命(いのち)を支える食と、いきいきと暮らせるふるさとの創造」を基本目標としました、福島県農林水産業振興計画、いきいきふくしま農林水産業振興プランというものを作りました。この中には大きく分けて6つの施策が掲げられていますが、主なものをお話しますと、「農業の振興」という 施策では、福島県の農業生産力強化に向けまして、安定的な農業用水の確保と、排水条件の整備、優良農地の整備、農業水利施設の適正な管理、そして耕作放棄地の発生防止と解消などを進めることにしています。
「魅力ある農山漁村の形成」という施策の中では、農業集落排水など農村の暮らしに必要な生活基盤を総合的に整備することや、安全で豊かな地域を作るために、災害に強い農山漁村づくりということで、危険度の高いため池などを対象として農地防災対策を進めることとしています。

司会者

ストックマネジメントという言葉を聞いたことがあるのですが、これは農業水利施設の管理と何か関係があるのでしょうか。

担当者

はい。いいご質問ですね。
福島県には7千ケ所を超すダム、ため池、ポンプ場などの農業水利施設や、1万キロメートルを越す幹線的な農業用の水路があります。この中には既に耐用年数を過ぎたものが多くありまして、今後ともこれらを維持していくために、適切な対応が求められています。
人間の体に例えますと、これらの農業水利施設は心臓や血管、農業用水は血液ということになるでしょうか。人が年をとりますと動脈硬化が進んで来ると同じように、水路なども老朽化が進んできます。
農業を営むためには水はなくてはならない物ですよね。老朽化をほっておくと、ポンプや水路が壊れてしまって、農地に水を送ることができなくなってしまいます。
このような状況を防ぐために、日頃から施設の点検をして状況を把握して、予防保全のための計画を作ります。これを基にしまして老朽化が進んで完全に壊れてしまう前に、補修をこまめにしながら施設の長寿命化と、維持管理費を下げて行こうというのが、ストックマネジメントです。
先ほどお話しました、いきいきふくしま農林水産業振興プランでは、これを重点戦略の一つに掲げておりまして、今後5年間で積極的に進めて行くこととしています。

司会者

農業農村整備事業は、福島県の農業や、農村に住んでいる人たちを支えるために必要だということはわかりました。でも、今年の国の予算では相当減額されていると聞きましたが。

担当者

そうなんです。大変残念なことに、今年度の国の農業農村整備予算は、色々な理由から昨年度に比べて約半分になってしまいました。
農業は、地域の経済を支え、食料の安定供給によって県民の皆様の生命をはぐくむ重要な産業なんです。農業や農村は、豊かな自然や景観、伝統や文化をはぐくんでいるほか、河川や地下水に水を供給する機能や、国土を保全するなどの多面的な機能を持っているんです。
農業のこれからの発展や、農村地域が元気を取り戻していくためには、これまでお話してきましたように、生産性を向上させる農業生産基盤の整備と、農村環境の保全が大切であって、農家の皆さんが意欲とやりがいを持って営農できる環境を作って行くためにも、農業農村の整備は、今後とも必要な物なのではないかと思っています。

司会者

限られた予算を、今後どのように使っていくのでしょうか。

担当者

予算は限られていますので、効率的に効果的に、無駄の無い使い方をしていかなければなりません。
そのため、まず第一に、農家の皆さんの経営の確立や、県民の皆さんに安全で安心のできる農作物を、安定的に供給することが重要だという考えから、農用地の利用集積や、担い手の育成確保と一体となったほ場整備、取水施設や水路などの重要な農業水利施設の長寿命化といった農業生産の振興に直結する事業を優先的に進めていきます。
2つめとしては、農村生活環境の整備です。安全な農作物を作るための、農業用水の水質保全や、農村地域での住みやすさを向上させるために、農業集落の生活排水処理の整備を進めていきます。
3つめとしては、安心して暮らせるよう農村地域での自然災害を防止するため、危険度の高い老朽化しているため池や、用排水施設の整備を進めていきたいと考えています。

司会者

ありがとうございました。
厳しい予算の中で、効率的に農業農村整備事業を進めていくことは、大変なご苦労がおありかと思いますが、県民の皆さんそして農家のみなさんのため、今後ともご努力をお願いしたいと思います。
今朝の土地連だよりは平成22年度福島県の農業農村整備事業の概要について、福島県農林水産部に勤務しております、農村計画課の後藤庸貴さんにお話を伺いました。