「農地と農業用施設の防災・災害対策」について
【平成22年8月26日ラジオ放送】
担当者:福島県農林水産部 農業基盤整備課 主任主査 鈴木 敦
司会者:RFCアナウンサー
司会者
農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、農地と農業用施設の防災・災害対策についてご紹介します。
お話は、福島県農林水産部農業基盤整備課で農地防災を担当していらっしゃいます鈴木敦さんに伺います。
鈴木さん、まず、農地とは、田んぼや畑のことだと思いますが、農業用施設とはどのようなものをいうのでしょうか?
担当者
はい。
農業用施設とは、農地の利用や保全のために必要なもので、公共性のある施設のことです。
具体的には、農業用水を貯めておく「ため池」、河川から農業用水を取り入れるための「堰」、農地へ農業用水を流すための「水路」などのことです。
農地や農業用施設は、農業の生産を維持したり、安定的に農業を経営していくために必要なものですから、これからもしっかり維持していかなければならないと考えています。
司会者
農地や農業用施設は、農業の基盤を支える重要なものということですね。
ところで、毎年大雨による道路の土砂崩れなどの被害をラジオでもお伝えするのですが、県内で毎年農地や農業用施設でも被害が発生しているのですか?
担当者
はい。
農村では、毎年のように大雨や台風等の災害に見舞われ、農地や農業用施設でも大きな被害が発生しています。
災害の発生状況は年によって変わりますが、県内では、平成16年から平成20年の過去5年間で平均すると、1年間で農地が約390箇所、農業用施設が約580箇所の被害が発生しています。
また、農地と農業用施設を合わせた年間の平均被害額は約13億6千万円になっています。
このうち、農業用施設の被害額が約8割を占めています。
司会者
農業用施設で毎年大きな被害が発生しているということは、農家の皆さんに大きな影響があるということですよね。
担当者
はい。おっしゃる通りです。
そのため、誰でも安心して暮らせる災害に強い農村づくりを目指して、農業用施設に対する防災対策を進めています。
司会者
どのような取り組みをされているのでしょうか?
担当者
はい。
農村地域には、老朽化などにより施設に異常があり、災害に対して弱くなっている農業用施設が数多くあるため、災害に耐えうるような施設になるよう、弱い箇所を補強したり、異常がある箇所を造り替えたりするなどの防災対策を進めています。
中でもため池の防災対策は特に重要だと考えています。
司会者
なぜ、ため池の防災対策が大切なのでしょうか。
担当者
はい。ため池は、農業用水を確保するために、造られた人工の池のことですが、県内には大小合わせると約3,700箇所あります。
農業用水確保以外にも、洪水の調整、防火用水としての活用、いろいろな生物の成育場所、さらには地域の方々に親しまれる憩いの場など、多面的な役割を持つ地域の大切な施設です。
しかし、その大半は江戸時代・明治時代に造られた施設で、堤から水が漏れているなどの理由で、500を越えるため池で今後なんらかの対策が必要とされています。
大型台風や集中豪雨等で大量の雨が降った場合に、ため池の堤が崩れ、水が一気に流れ出すと、下流の農地や水路などに被害が発生し、場合によっては人命にも危険が及ぶ可能性もあります。
このため、今後もため池を安全な状態でしっかり守っていくことが大切だと考えています。
司会者
ため池は地域の大切な財産で重要な施設であり、かなりの箇所で対策が必要であることはよくわかりましたが、施設を直すことは簡単にできるのでしょうか?
担当者
はい。
ため池の大きさや直す箇所によっても必要な金額は変わりますが、かなりの箇所で対策が必要なため、必要な金額も多くなります。
しかし、厳しい財政状況もあって、全ての施設をすぐ直すことはできません。
そのため、施設の状態をよく確認し、危険性の高い箇所から順次対応しています。
司会者
多くの危険なため池を長い間そのままにしておいて大丈夫なのでしょうか?
担当者
はい。
対策が必要な多くのため池も、日頃の管理をしっかり行うことにより、災害を未然に防ぐことはできます。
司会者
ため池を安全に使うためには、日頃の管理が重要だということですね。
それでは、災害を未然に防止するためには、どのようにため池の管理を行えば、よいのでしょうか?
担当者
はい。
5つほど管理のポイントをお話します。
1つ目は、ため池の草刈りを年1回以上は行って下さい。
草刈りをすることで、堤に割れ目や水が漏れている箇所があった場合に見つけやすくなります。
2つ目は、ため池に水を貯める前などにため池の清掃をして下さい。
木や枯れ葉、ゴミが溜まったままの状態にしておくと、ため池の水位が急に上がり、堤が崩れる原因になることがあります。
3つ目は、可能であれば、年に1回程度、ため池の水位を下げて池内で崩れている箇所がないかどうか、土砂が溜まっていないかどうかなどを確認して下さい。
4つ目は、大雨が予想される場合には、ため池内の水位を下げておいて下さい。
下流への洪水被害を減らすことにつながります。
最後に、ため池の堤から水が漏れている場合は、定期的に見回りをして確認して下さい。
水漏れがあってもすぐに危険ということはありませんが、漏れている水が濁っている場合や量が急激に増えた場合は、注意が必要です。
このような場合やその他の異常を見つけた場合は、最寄りの市町村や土地改良区などに相談していただきたいと思います。
司会者
ため池の草刈りや清掃等は大変な作業のように思うのですが。
担当者
はい。
おっしゃる通り、最近では、農家の数が減ったり、農家の方々が高齢化したりして、草刈りや清掃等の共同作業を継続していくことが大変な地域も多くなってきております。
先にもお話したように、ため池は、農家の方々だけの施設ではなく、地域にとっても大切な財産ですので、地域ぐるみで、ため池を保全していくことがこれからは必要なのではないかと思います。
農家の方以外の方も、出来るだけ、地域にあるため池の草刈りなどの共同作業に参加をいただければと思います。
司会者
ため池の管理に地域の皆さんで協力し、次の世代に良好な形で引き継いでいきたいものですね。
その他に何かありますか。
担当者
はい。
全国では毎年、豪雨・台風時に農地や農業用施設の見回りや作業に行かれ不幸にして亡くなられる方がおられます。
異常出水など洪水時に備えて農地や農業施設の見回りをする際には、テレビやラジオ等で常に最新の気象情報を確認し、安全を十分確認した上で、必ず複数の人で行動するようお願いします。
人的な被害が発生しないよう皆さんでお互いに気をつけましょう。
司会者
ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは、農地と農業用施設の防災・災害対策について、福島県農林水産部農業基盤整備課で、農地防災を担当しております鈴木 敦さんにお話を伺いました。