選奨土木遺産「西根堰」の認定について
【平成23年1月28日ラジオ放送】
担当者:伊達西根堰土地改良区 事務局長 石川 博利
司会者:RFCアナウンサー
司会者
農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、選奨土木遺産に認定された「西根堰」について、水土里ネット西根堰(みどりネットにしねせき) 事務局長の石川博利さんにお話をお伺いします。
はじめに選奨土木遺産の認定とは、どの様なものなのかお伺いします。
担当者
はい、選奨土木遺産の認定について、一般にはあまり馴染みがないと思いますが、社団法人土木学会が、身近にある土木構造物について、その遺産的価値を広く社会にアピールし、それぞれの地域の社会的遺産として保存し、まちづくりに活かしてもらおうという考えで、平成12年に認定制度を設立いたしました。全国で年間20件程度を選出しており、西根堰の認定は福島県内では4件目となります。
司会者
認定の経緯などについて、お話を頂けますか。
担当者
はい、認定の基準として、対象は近世以前や竣工後50年経過した土木関係施設等が対象となります。また、技術的なこととして、年代の早さや技術力の高さ、そして、地域性として、地元での愛着度等も選考の基準となります。
西根堰は、江戸時代初期に作られた農業用水路として、当時としての測量技術や土木技術の高さ、また、約390年間多くの人の手で維持管理され、現在でも農業に欠かせない施設として利用されていることが評価されました。
司会者
西根堰は大変歴史があり、遺産的価値も高いと言うことですね。
担当者
はい、また、地域の小学校では、郷土の歴史に関わりが深いため、施設の見学学習にも利用されており、桑折町の小学校の校歌にも歌われています。最近は、一般の方でも郷土史に興味をもち、西根堰への関心も高くなっています。
司会者
地元での愛着度という点で評価されたと言うことですね。
担当者
はい、今回の土木遺産認定の申請にあたって、地域の郷土史研究会等の団体や個人の方々のご協力により、学習会や現地調査を行って資料をまとめる事が出来ました。
司会者
それでは、西根堰についてもう少し詳しくお話を頂けますか。
担当者
はい、西根堰は江戸初期に作られた上堰と下堰という2本の用水路です。1618年に下堰が作られ、その後、1624年より上堰が作られました。その当時、本地域は米沢藩上杉家の領地でしたので、皆さんご存じの上杉景勝や直江兼継も西根堰に関係しています。しかし、西根堰を作るための技術や工事は、旧武田家の家臣や甲斐流の技術が使われています。
司会者
武田家というと武田信玄ですか。
担当者
はい、武田家の家臣が上杉家の家臣となり、会津から米沢に移り、そしてこの福島の地で西根堰の工事に携わったということが、技術力の高さと併せて、農業土木技術の系譜として残っている事が、歴史的にも大変興味深い事だとおもいますが、あまり知られていませんでした。
司会者
今回の成果の一つでしょうか。
担当者
はい、土木技術という点で語られることがあまり無かったようです。
西根堰は作られた当時の技術と併せて、約390年経った現在はコンクリート水路になっていますが、水路の流れは当時とそれほど変わっていないことと、西根堰は出来るだけ遠くまで水を運ぶため、等高線に沿った緩やかな勾配でつくられており、河川との交差等に様々な工夫を凝らしていますが、その分維持管理も大変でした。また長年の間には、隧道工事や川からの取り入れ口の改修工事を行うなど、多くの地域住民に支えられて現代に受け継がれてきました。
司会者
そうして豊かな農地が広がり、農業が盛んになったわけですね。
担当者
はい、そうです。小学校4年生が地域の歴史として、西根堰について学習するのは、本地域の産業として農業が重要な産業であり、農業の発展と西根堰の関係がとても深いからだと思います。水土里ネットでは、施設の案内や説明の協力も行っています。また、農業用水の水源林保全の啓蒙を目的として、小学生を対象にした「西根堰の隧道探検」を実施してます。
司会者
その様な取り組も評価された点ですね。
担当者
はい、そうです。
司会者
選奨土木遺産の認定では、様々な点が評価されていることがわかりました。
認定を受けて、今後の活動などがあればお聞かせ下さい。
担当者
はい、「土木遺産の認定はゴールではなくスタートである。」と言われています。これは、制度の目的として、地域の資産としてまちづくり活かすことや、取り組の継続性があります。全国の水土里ネットが取り組んでいる、21世紀土地改良区創造運動とも共通することですが、地域の人たちとみんなで考えることと、コツコツと小さな活動でも継続して取り組んで行くことが目的となっています。
司会者
21世紀土地改良区創造運動は以前にお話を伺ったことがあります。県内でも多くの水土里ネットが様々な活動を行っていますね。
担当者
はい。今回、申請のための学習会や、昨年認定を記念して福島市で開催したシンポジウムにより、多くの団体や個人の方との連携の輪が広がっていくことが感じられました。例として、着地型観光の資源としての利活用や、西根堰に沿った道路を利用したウォーキングの活用等が提言されています。
司会者
様々な活用の可能性がありますね。
担当者
はい、西根堰は重要な農業施設ですので、今後もしっかり維持管理して、西根堰を後生に引き継いで行きたいと思います。また、一般の方にもっと知っていただくためにも、地域資源として、そして歴史的資産として、各種団体や関係機関、興味を持ってくださる方々と連携を図った活動が出来ればと思っています。
司会者
今後の活動が楽しみですね。
選奨土木遺産の認定を受けた「西根堰」についてお話を伺いましたが、大変興味深く、そして今後の活用にも大変期待が持てると感じられました。
今朝は、「水土里ネット西根堰」伊達西根堰土地改良区 事務局長の石川博利さんにお話をお伺いしました。