「農業水利施設の維持管理」について
【平成23年6月29日ラジオ放送】
担当者:福島県農林水産部 農地管理課 主事 遠藤 敦
司会者:RFCアナウンサー
司会者
農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、農業水利施設の維持管理についてご紹介します。
お話は、福島県農林水産部農地管理課で農業水利施設の管理を担当していらっしゃいます遠藤 敦さんに伺います。
それでははじめに、農業水利施設とはどのようなものをいうのでしょうか。
担当者
はい。農業水利施設というのは、水田や畑に使う水を取水したり、排水したりする施設のことで、
- 農業用水を貯めておくダムやため池
- 川から水を取り入れるための堰
- 水田に水を取り入れたり流したりする用排水路
などのことをいいます。
福島県には、こうした農業水利施設が約7,000施設ありまして、また、受益面積が100ヘクタール以上の基幹的な役割を果たしている用排水路は、約1,000キロメートルにも及びます。
農家の皆さんにとっては、これらはとてもなじみの深い施設であると思いますが、同時に、安定的な食料供給には欠かせない重要な社会資源と言うことができると思います。
司会者
私たちのまわりには、安定的な農業のために必要な農業水利施設が非常にたくさん存在しているということですね。
それでは、これらの施設を維持管理していくうえでの取り組みについてお話しをお願いします。
担当者
はい。これらの施設は、主に市町村や土地改良区が管理しておりますが、農業用以外にもさまざまな機能を持っておりまして、そうした機能を地域住民の方に積極的にPRして、多くの方に施設の維持管理に関心をもっていただこうという運動をしております。
司会者
農業水利施設はさまざまな機能を持っているということですが、具体的にはどのようなものでしょうか。
担当者
はい。例えば、水路を例にとりますと、農業用水を供給するという本来の機能の他に、火災が発生したときに消火活動を行う防火用水としての機能、また、堰から水路に流す水を調節することで、大雨時の洪水防止機能、さらに、水路に流れている水は、そこに生息している魚や小さな生き物にとっての生態系保全機能、といったさまざまな機能を持っております。
水路を例にとりましたが、他にも、例えばダムやため池において、水辺に人が集まり、親水機能、つまり水に親しむという役割を有しているところも少なくありません。
司会者
なるほど。私たちの身のまわりにある農業水利施設は、農業用以外にも、様々な役割を担っているということですね。
担当者
はい。県では、こうしたさまざまな機能を多くの方に知っていただき、私たちの身のまわりにある農業水利施設へ是非目を向けていただきたいと考えています。
そうすることで、水路やため池に捨てられるゴミが減ったり、ボランティアで清掃活動に参加してくれる人が増えたりと、施設の維持管理にとっても効果があると考えています。
司会者
農業水利施設のさまざまな役割を多くの人に知ってもらうことが、施設を大事に使っていくことにもつながるわけですね。
担当者
そうですね。農業水利施設は貴重な社会資源ですので、その役割を理解し、大切に使っていただきたいと思います。
本日は、もう一点、お話ししたいことがあります。それは、毎年発生している事故についてです。これは、水路やため池等で私たちの身近にある施設での事故で、ラジオをお聞きの皆さんに是非知っておいていただきたいと思います。
司会者
どのような事故が発生しているのでしょうか。
担当者
最も多いのは、水路やため池への転落事故です。
県内でも、ため池の見回りをしていた農家の方が、転落して亡くなるという痛ましい事故が発生しております。
また、全国でも、高齢者や小さな子供が、水路やため池に転落して亡くなる事故が毎年発生しており、非常に残念なことであると思っています。
司会者
小さなお子さんや高齢の方が犠牲になる事故が多いということですが、こうした事故を防止するためにはどのようなことが必要ですか?
担当者
事故防止のための対策についてですが、まず、小さなお子さんの場合ですが、お子さんが水路やため池の近くで遊んでいるうちに、誤って転落してしまったといった事故があります。
そこで、子供が水路やため池の近くで遊んでいるのを見かけましたら、保護者でなくとも、一言注意してあげることが大切です。
次に、高齢者の場合ですが、水路やため池の見回りに出かけて、誤って転落してしまうという事故が多く発生しております。
そこで、点検に出かける場合には、出来るだけ一人ではなく複数で行うといった注意が必要だと思います。
また、施設管理者は、立看板を設置するなどして注意喚起をしていただくことが必要だと思います。
司会者
これから梅雨の季節にもなりますが、あわせて注意することはありますか?
担当者
はい。大雨が降ると、急激に水路の水が増水することがあり、大変危険です。
また、足下も滑りやすくなりますので、そうしたときには水路やため池には近づかないようにして下さい。
特に今年3月の東北太平洋沖地震で被災している施設では、二次災害の心配もあるので、注意が必要です。
本日は、農業水利施設の維持管理の取り組みのなかで、水路やため池の持つさまざまな役割についてご説明しましたが、反面、事故も発生しておりますので、危険な面もあるということを十分にご理解いただきたいと思います。
司会者
ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは、農業水利施設の維持管理について、福島県農林水産部農地管理課で施設管理を担当しております遠藤 敦さんにお話を伺いました。