「津波浸水区域の災害復旧調査事業」について
【平成24年1月27日ラジオ放送】
担当者:福島県土地改良事業団体連合会 農村振興部 次長 渡辺 隆
司会者:RFCアナウンサー
司会者
農家の皆さん、おはようございます。
今朝の「農家の皆さんへ」は、土地連だよりとして『福島県内 農地・農業用施設等被災状況緊急調査』について、ご紹介します。
お話は、福島県土地改良事業団体連合会 農村振興部次長の渡辺隆さんにお伺いします。
渡辺さん、おはようございます
担当者
おはようございます。
司会者
はじめに、この調査は、どのような内容なのかお伺いします。
担当者
はい、この調査は昨年3月11日に発生しました震災により、本県の太平洋沿岸では高さ10メートルを超える大津波が発生し大きな被害が生じました。
特に、浜通り沿岸の優良な農用地では、農地・農業用施設が壊滅的な被害を受けたほか、大規模な地盤沈下が生じました。7月の調査開始時点では、原発立入禁止区域を除くと、航空写真及び衛星写真から被害面積は約3,900ヘクタールと推測されました。
このため、被災農業区域における早期営農再開のために、農地・農業用施設等の被災状況調査、復旧計画等の策定をとりまとめることを目的に、東北農政局からの委託調査となっています。
司会者
では、具体的にどの様な調査を行ったのですか。
担当者
はい、調査内容については、津波浸水による耕作土の流出の有無、用排水路の破損・流出及び流入土砂堆積厚などの被害状況、海水の浸水範囲の確定、海底由来の砂・泥の堆積状況とその成分及び農地の塩分濃度などを調査しました。特に農地の塩分調査は、今後営農再開のための重要なポイントとなるため、塩分濃度・電気伝導度・土壌のpHを測定しました。
また、農地の堆積物は津波被害によるものが多く成分調査は、土壌の汚染にかかる環境基準に基づき、人的健康保護及び作物の生育障害防止の指標となる特定有害物質である、カドミウム・銅・ヒ素・亜鉛の4項目について調査しました。さらに、農業用水の補給水となる農業用井戸の水質調査についても調査しました。
調査にあたっては、水土里情報システムの地図データにより調査箇所を設定することとしましたが、調査箇所が広大であり被害も甚大で地形図等での調査箇所が特定できないため『モバイルGPS計測器』により、現地確認し調査データの入力行ない、水土里情報システムとリンクさせることにより、地図と調査データが一元化されるような方法としました。
司会者
はい、わかりました。
今回の調査結果について簡単に説明していただけますか。
担当者
はい、調査結果の概略をお話ししたいと思います。
まず、流入土砂の重金属関係ですが、ほぼ全地点で許容範囲となっていますが、一部地点でカドミウム・亜鉛が許容値を超えています。原因として、海底由来の砂・泥等の影響及び船舶等の燃料または園芸ハウスの加温燃料考えられます。なお、重金属関係は、復旧後再調査が必要であると考えます。
また、塩分濃度については、水田の作付け基準0.1パーセント以上の地点が新地町・相馬市・南相馬市で調査箇所の8割以上でみられ、広野町・いわき市では3割程度で地域により塩害被害の大小が見られます。これは、海岸線の状況などにより海水の滞留時間の違いからではないかと思われます。
さらに津波による流入堆積厚については、新地町・相馬市・南相馬市では最大40から50センチメートル程度見られ平均9から10センチメートルに対して、広野町・いわき市では最大10センチメートル程度で平均3から4センチメートルです。
これは、同じ浜通り沿岸地域であっても震源からの距離、海底の状態、海岸線の状態さらには農地の配置状況により被害状況に変化が見られるのではないかと思われます。
また、今回調査した農業用井戸については、海岸部から遠方または高台にあり、農業井戸の水質としては特に問題はなかったと考えます。
司会者
はい、甚大な被害のなかでも地域により、様々な条件により変化がみられるのですね。では、最終的なとりまとめについてお話下さい。
担当者
はい、復旧計画の策定に当たっては、被災状況調査結果をもとに、被害の程度により被災農地を3区分に分類しました。その後、市町村毎に農地の未整備・整備済区域の標準的な被災地区を選定し、モデル的な区域の標準復旧費用を算定後、市町村毎の被災面積に掛けて復旧見込み額の検討を実施しました。
また、標準地区のモデル事業費算定資料については、相双管内の農地災査定設計書の標準地区として活用されたり、塩分濃度データについては除塩事業の基礎として活用されました。
さらに、今回の調査関係の図面及び調査データについては、関係機関へ提供してまいりましたので、復旧計画に活用されたのではないかと考えております。
司会者
とりまとめまでお聞きしましたが、調査実施にあたって苦労された点がありましたら、お話しいただけますか。
担当者
はい、まず今回の震災が甚大で調査範囲が広大であり、調査項目も多く職員の配置等に苦労しました。
また、地震、津波、原発事故、放射能問題により関係者の避難により資料収集が困難だったこと。
さらに、調査時期と災害査定時期のずれから、降雨等の影響と地権者による自己復旧から土砂堆積厚等に違いがみられたり、災害復旧事業では被災写真が非常に重要なものであるが、写真の不備で再測等の手戻りが生じたことなどがありました。
司会者
最後になりますが、渡辺さん、この調査結果を、今後、どのように活用されるが重要であると、お考えでしょうか。
担当者
はい、この調査を津波浸水被害のたんなる記録調査としてでわなく、災害復旧のための大きな一つのデータとなることを願っています。また、震災の県内情報を水土里情報システムに一元化しましたので、様々な検索・抽出が可能であり今後の防災計画等に役立てていただければ考えています。
最後に調査にあたり、東北農政局、福島県及び関係市町村、土地改良区皆様の、ご協力により無事調査が完了し、県内全域が災害復旧に向けて進んでいること深く感謝しております。また農家の皆様へは、早期な営農再開ができますことを、土地連としても微力ではありますが、多方面からバックアップしますので、関係機関ともどもよろしくお願いいたします。
司会者
ありがとうございました。
今朝の「農家の皆さんへ」は「福島県内 農地・農業用施設等被災状況緊急調査」について、福島県土地改良事業団体連合会 農村振興部次長の渡辺さんにお話を伺いました。