「農業用水の管理に関する当面の注意点」について

【平成24年4月27日ラジオ放送】

担当者:福島県農林水産部 農地管理課 主任主査 馬場 岳志
司会者:RFCアナウンサー

司会者

農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、農業用水の管理に関する当面の注意点について、県農林水産部農地管理課施設管理担当主任主査の馬場岳志さんにお話しを伺います。
よろしくお願いします。

担当者

おはようございます。よろしくお願いします。

司会者

はじめに、農地管理課の施設管理担当で行っている業務の内容について教えてください。

担当者

はい。施設管理担当では、県で保有する農業用ダムや排水ポンプ場などの管理を行うほか、県内の様々な農業水利施設(水路、ため池、用水ポンプ場、取水堰)の状況を把握して、適切な時期に補修・更新するための計画づくりとその運用を行っています。

司会者

農業用水のための施設の管理と計画的な保全といったことでしょうか。

担当者

はい。その通りです。

司会者

では、農業用水について、原発事故の影響がどうなのか、農家のみなさんの心配なところと考えますが。

担当者

はい、今日は農業用水の管理について、放射性物資の影響をできるだけ少なくするための注意事項を、お話しさせていただきたいと考えます。

司会者

どのようなことに気をつければ良いのでしょうか。例えば用水そのものにも影響はあるのでしょうか。

担当者

まず、県内で今年作付けが可能な地域でモニタリングした結果ですが、採取した農業用水のほとんどでは、放射性物質が計測されませんでした。また検出されても、1キログラムあたり数ベクレル程度と、非常に小さな数値でありました。農業用水そのものについては、影響は少ないと考えています。
しかしながら、水路の底にたまっている土や、ため池の底の土からは、場所によるばらつきは大きいのですが、数百から数千ベクレル程度の値、放射線量が高い地域では、局所的ですが、数万ベクレルの値が観測されることがありました。

司会者

水に含まれないのに、底の土に含まれるというのはどういうことなのでしょうか。

担当者

はい、放射性物質は土粒子、いわば土の粒ですが、それに吸着しやすい性質があります。放射性物質が付着した土が、水の流れにより運ばれて、流れが緩やかなところで、沈んでたまるといったことと考えています。

司会者

では、そのような放射性物質を含んだ土が、農地に入らないようにするには、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。

担当者

はい。用水路、排水路では、流れの緩やかなところや、集水マスにたまった土砂から、比較的大きな放射性物質の値が観測される傾向にあります。
これら底にたまった土は、大雨の時などに濁り水となって流れ出すものもあります。
そこで対策ですが、大雨の時は取水を控えること、また、水の掛け口に肥料袋や土のうなどを置いて、簡単な土砂だめをつくり、そこで沈降させることも有効と考えられます。

司会者

用水路の土砂などは、春先に土砂上げをするのが通常だと考えますが。

担当者

はい、県内の各地では、今年は放射性物質を含んだ土をどう処分するかの問題から、土砂上げを見送った地域が多いようです。また、比較的影響が少ないとの判断から、例年どおり土砂上げを行っている地域もありまして、地域によって違いがあります。
しかしながら、いずれの地域においても、水路の底土には、放射性物質が局所的に集まることがあるということを認識いただき、その底土を可能な限り農地に流入させない対策、例えば大雨の時は取水を控えることなどが有効であると考えます。
また、土砂上げを既に行った地域では、堀上げた土砂が、再度水路や農地に入らないようにすることも大切です。
具体的には、払った土砂を水路脇に置く場合は、再度流れ出さないよう配慮することや、可能であれば、土砂を土のう袋や肥料袋に入れておくことが有効と考えます。

司会者

よく山からの落ち葉に放射性物質が付着しているという話を聞きますが。

担当者

はい、山際を通ってくる用水路では、こまめに落ち葉を排除して農地に入れないことも有効です。

司会者

先ほどため池の話もありましたが。

担当者

はい、ため池についても、山から来た濁り水がそこで貯まることにより、放射性物質が土と一緒に沈み、底土に堆積しやすい傾向にあります。
このため、ため池から取水するときは、常に上層の水を取水するよう心がけることが必要です。
具体的には水面に近い取水栓からのみ取水するよう心がけ、水位が底から1メートル程度以下ではできる限り取水しないこと、大雨で濁り水になるような時は取水を控えることなどが有効と考えています。
また、底からしか取水できないため池でも、雨の時の濁り水を取水しないようにすることは有効です。

司会者

その他に気をつける施設はありますか。

担当者

はい、揚水機、ポンプ場ですが、取水口前の堆積した土から放射性物質が確認されることがあります。
このため、取水口の前に土のう等を積んで土砂だめをつくり、濁り水に含まれる土砂をそこで沈降させて、ポンプには土砂を吸い込まないような対策が有効と考えます。
また、河川からの取水口でも、その前に土砂だめを造ること、大雨の時は取水しないことが有効です。

司会者

まとめると、放射性物質は、用水そのものにはほとんど含まれないが、ため池や水路の底の土には、局所的に集まることがある。このため、農業用水の管理にあたっては、できるだけ濁り水を農地に入れない、土砂だめ等により取水する前に沈降させることなどが有効といったことでしょうか。

担当者

はい、その通りです。この取り組みを全県でねばり強く行っていくことなどで、福島県産農産物から放射性物質が検出されないという目標に向かって行きたいと考えます。

司会者

ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは、農業用水の管理に関する当面の注意点について、県農林水産部農地管理課主任主査の馬場岳志さんにお話しを伺いました。