「東日本大震災による農地、農業用施設の被害と復旧に向けた取り組み」について

【平成24年5月24日ラジオ放送】

担当者:福島県農林水産部 農村基盤整備課 主任主査 鈴木 秀一郎
司会者:RFCアナウンサー

司会者

農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、「東日本大震災による農地、農業用施設等の被害と復旧に向けた取り組み」について、県農林水産部 農村基盤整備課 主任主査 鈴木秀一郎さんにお話しを伺います。
よろしくお願いします。

担当者

おはようございます。よろしくお願いします。

司会者

鈴木さん、農地とは、田んぼや畑のことだと思いますが、農業用施設とはどのようなものなのか教えてください。

担当者

はい。農業用施設とは、農地の利用や保全のために必要なもので、公共性のある施設のことです。
具体的には、水を貯めておく「ため池」、河川から水を取り入れるための「堰」、農地へ水を流すための「水路」などのことです。
農地や農業用施設は、農業の生産を維持したり、農業用水を安定供給していくために必要なものですから、しっかり維持していかなければならないと考えています。

司会者

農地や農業用施設は、農業生産の基盤を支える重要なものということですね。
それでは、東日本大震災により、農地や農業用施設にどれくらいの被害があったのでしょうか。

担当者

はい。東日本大震災による県内の農地と農業用施設の被害は、原発事故に伴う警戒区域及び計画的避難区域を除いて確認できているものが平成24年3月末時点で約5,700カ所で約2,300億円にのぼっています。
中でも、沿岸部の農地の津波被害が約5,500ヘクタール、浜通りの排水機場が約40カ所、海岸は整備延長の90パーセント以上、ため池の被災が約800カ所と極めて甚大な被害となっています。
これは過去最大の災害だった平成10年の豪雨災害と比較して約15倍の被害額となっています。
また、津波による甚大な被害を被った相馬市と南相馬市は、被害額が約1,400億円となっており、これは被害額全体の約60パーセントを占めています。

司会者

大変な被害が生じていますね。これだけの大きな被害のあった農地や農業用施設について、どのように復旧を進めているのでしょうか。

担当者

はい。緊急に対応する必要のあった地域住民の皆さんのライフラインの確保として農村の下水道である農業集落排水施設、二次災害の恐れがあるとして排水機場、海岸堤防等の施設の応急仮復旧工事を実施しました。
その他の被害カ所に関しては、平成23年5月から国の災害査定を受けており、決定したものから早期の復旧に向けて工事を進めています。
復旧工事に関しては、単年度で工事が終わるものから、規模の大きなものは完成するまで数年の年月を要するものまであります。
また、津波被害を受けた地域に関しては、今後、市町村や地元住民の意向を踏まえながら工事を進めていく必要があります。

司会者

大震災から1年が経過し、復旧の状況はどうなっているのでしょうか。

担当者

はい。これまで全体の約半分のカ所で工事に着手し、このうち規模の小さなものは既に完了しています。
代表的施設の復旧状況についてですが、排水機場19施設、農業集落排水施設90地区で応急仮復旧工事と本復旧工事を実施しています。
さらに、この5月には国直轄事業により隈戸川地区のパイプラインが復旧し、県南地域を中心とした農地約3,200ヘクタールの作付けが可能となりました。

司会者

着実に復旧が進んでいるようですね。今後の取り組みはどのように考えているのですか。

担当者

はい、放射性物質は土粒子、いわば土の粒ですが、それに吸着しやすい性質があります。放射性物質が付着した土が、水の流れにより運ばれて、流れが緩やかなところで、沈んでたまるといったことと考えています。

司会者

では、そのような放射性物質を含んだ土が、農地に入らないようにするには、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。

担当者

はい。県としましては早期の営農再開や安定的な用水供給を行えるよう計画的に復旧工事を進めてまいります。また、復旧費用については、必要額を確保することとしています。
一方、この4月の警戒区域の見直しにより、「避難指示解除準備区域」となった地域については、住民みなさんの帰還に向けた応急仮復旧工事や、農地や施設の災害調査を速やかに進めていくこととしています。

司会者

農地や施設の復旧に向けて大変だと思いますが、県の農業の復興に向けて頑張って頂きたいと思います。
その他に何かありますか。

担当者

はい。最後に全国からの支援の状況についてお知らせしたいと思います。
平成23年度は、国及び26道府県から約300名の農業土木技術職員の派遣支援を受け、災害調査業務を中心に重要な役割を果たして頂きました。
本年度も北は北海道から南は沖縄まで全国各地より農業土木技術者の派遣を受けており、相双農林事務所で災害復旧業務を担当して頂いております。
本県農業の復興のため、ふるさとや家族と離れ、慣れない生活環境の中、本県職員と共に毎日夜遅くまで業務をこなしている状況にあり、大変感謝しております。

司会者

ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは、「東日本大震災による農地、農業用施設の被害と復旧に向けた取り組み」について、県農林水産部 農村基盤整備課 主任主査の鈴木秀一郎さんにお話を伺いました。