「土地改良区における滞納処分」について

【平成24年12月29日ラジオ放送】

担当者:福島県土地改良事業団体連合会 総務企画部 企画指導課 課長 谷 孝樹
司会者:RFCアナウンサー

司会者

農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、「土地改良区における滞納処分について」お話しをうかがいたいと思います。お話しは水土里ネット福島総務企画部企画指導課長 谷 孝樹さんにおうかがいします。
まず、はじめに県内の土地改良区の状況について簡単にご説明くださいますか。

担当者

はい。土地改良区の未収金は、平成22年度末調査で、総額14億円となっております。また、85パーセントの土地改良区で未収金が発生しています。
未収金の原因にはいろいろなものがありますが、主なものに、昨今の農業情勢や米価低迷、また原発事故による風評被害を反映し、農家経済の悪化に起因するものが多くなっています。
また、滞納処分地区を対象とした調査では、組合員の高齢化、耕作放棄地の増加など、農村集落の構造変化に伴う昨今の課題とした地区も多くなっています。

司会者

未収金が多くなると、土地改良区の運営面でどういった影響が考えられますか。

担当者

はい。まず、適正な土地改良区運営が困難となります。それから、賦課金をまじめに納入している組合員とそうでない組合員との間に不平等感が広まります。
また、賦課金徴収率が90パーセントを切ると、公的融資が困難となり土地改良事業が、実施できなくなる可能性もあります。

司会者

そうすると、未収賦課金を回収しなくては、ならないわけですが、どういった方法がありますか。

担当者

まず、賦課金未納が生じた場合、徴収権の時効中断措置を講じることが必要です。時効の中断措置としては、督促状を送付する、・分割納付・延納に関する承諾書を組合員からもらうなどです。
また、電話や文書・訪問による催促で可能な限り滞納整理を行うことが重要です。

司会者

そういった督促状の発送手続きなどを行っても、滞納者が賦課金を支払ってもらえない場合は、どういった対応となりますか。

担当者

はい。その場合は、滞納処分を行うことなります。滞納処分としては、まず土地改良法上市町村に徴収請求を行います。請求を受けた市町村が、請求ができないか請求が未了の場合に、土地改良区の理事が滞納処分を行います。

司会者

滞納処分は、土地改良区の理事しか行えないのですか。

担当者

はい。土地改良法第39条の5項により、認可を受けた理事には、税務上の徴収職員または、徴収吏員の権限が与えれます。また、滞納処分を土地改良区の職員に委任することはできないと規定されています。したがって、滞納処分は、土地改良区の理事しか行えなません。

司会者

そうすると、土地改良区の理事とは責任が重いですね。

担当者

はい。土地改良区理事の責務を一言で言えば「滞納整理」であるのが本来です。このため理事には、質問検査権が与えられており、滞納原因を調査し、その原因に応じて、差押えや換価などの「自力執行権」を行使し、また、徴収猶予や処分停止などの処分をすることが、理事の業務となります。
土地改良区の理事は、賦課金納入の秩序を維持するという重要な役割を担っているといえます。

司会者

ところで、滞納処分もなかなか進まないと聞いていますが。

担当者

はい。そのためには、滞納処分を土地改良区理事の通常業務として認識することが、重要です。
期待できる効果としては、
納入折衝のスタンスが変わり、「分納のお願い」から「短期解決型」という視点になる。
・「納付しない滞納者」と「納付できない滞納者」の見極めができるようになる。
財産調査を中心とした業務となるため、滞納者の生活状況等を把握できる。
他の債権の差押えもできるようになる。手続きの基本的な考え方はどの債権でも同じであるので、差押対象財産の幅が増える。
・換価を行うことで滞納処分が組合員に周知され、組合員に対し納入意識の強い啓発につながる。
理事、土地改良区職員の満足度が上がる
・時効中断を目的とした「差押え」では仕事に手応えがない。土地改良区職員内での立場が変わり、職員のモチベーションの向上につながる。などです。

司会者

滞納処分効果を上げるポイントがあれば、ご紹介ください。

担当者

はい。滞納処分を効果的に進めるためには、いくつかのポイントがあります。まず、滞納処分を行う準備として、土地改良区内に未収金対策チームの設置することです。対策チームは、理事全員が関わる仕組みとすることが大事です。理由としては、クレーム対策等の負担も多く、特定の理事に業務を集中させるのは負担が大きいこと。また、全ての理事が関わることは、多くの課題解決のノウハウを蓄積していくことができ、理事のスキルが高まることにつながるからです。
2番目としては、換価の対象を不動産、それとも動産にするか決めることです。
3番目としては、滞納者に自主納付へのプレッシャーを与えることです。これは、換価予告を行うだけでも効果があります。

司会者

最後に、いままで、お話いただいた内容をまとめてお話ください。

担当者

はい。滞納処分は「イベント」的に一度実施して終わりにしては、せっかくの差押等のスキルを活かしていくことができないといえます。
そのためには、効率的に財産を調査し、差押を通常業務と実施していく体制を構築し取り組んでいくことが、「攻めの滞納処分」となり、土地改良区全体の徴収率アップと土地改良区運営の健全化に寄与するものになると思います。

司会者

今朝は、ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは、「土地改良区における滞納処分について」について、お話しを伺いました。