「津波被災農地の復旧」について

【平成25年9月25日ラジオ放送】

担当者:福島県農林水産部 農村基盤整備課 主査 寺島 美里
司会者:RFCアナウンサー

司会者

農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、「津波被災農地の復旧について」、福島県農林水産部 農村基盤整備課寺島美里さんにお話を伺います。
よろしくお願いします。

担当者

おはようございます!よろしくお願いします。

司会者

まずはじめに、東日本大震災による津波被災農地の状況について教えてください。

担当者

はい。
東日本大震災により、相双地域といわき市の沿岸部で5,462ヘクタールの農地が津波により被災しました。
現在、旧警戒区域を除く地域3,339ヘクタールで、説明会や座談会を通して地元農家の方々と対話をしながら、土地改良区、市町等関係する機関と、力を合わせ、一日も早い営農再開にむけ、農地の復旧作業を実施しております。

司会者

地元農家の方々と、話し合いを行い、農地復旧に取り組んでいるのですね。
では、どのような事業により復旧作業を行っているのですか。

担当者

はい。
津波による被災の程度により、つぎの3事業で復旧作業を行っています。
一つ目は「除塩事業」、二つ目は「農地・農業用施設災害復旧事業」、三つ目は「災害復旧事業と農地整備事業を併せた事業」です。

司会者

具体的にどのような事業内容になりますか?

担当者

はい。
まず、「除塩事業」は、津波をかぶった水田の表面部分の塩素濃度が0.12パーセント以上、畑作地においては0.05パーセント以上である農地について、石灰質の資材を散布し、湛水、代かきすることにより塩分を地下浸透させ、この一連の作業を塩分濃度が基準以下になるまで繰り返し作付け可能な農地へもどす事業です。
つぎに「農地・農業用施設災害復旧事業」は、市町が事業主体となり、がれき等が混在する農地や、流出、崩壊した用排水路などを、震災以前の状態へ戻す事業です。
3つめの「災害復旧事業と農地整備事業を併せた事業」は、県が事業主体となり、被災した農地とその周辺の農地を対象に、ほ場の大区画化や暗渠排水、農業用の水路を整備する事業です。本事業実施により、作業の効率化や生産性の向上を図るとともに、地域の農業を担い手に集約することにより、収益の高い農業をめざし、地域農業の復興を図れるような調整も行います。

司会者

現在の復旧状況についてお聞かせください。

担当者

「除塩事業」のみで復旧する面積は、全体で227ヘクタールを予定しており、いわき市の128ヘクタールは実施済みで、新地町、相馬市、南相馬市(鹿島区、原町区)においては現在も実施中です。
また、「農地・農業用施設災害復旧事業」で復旧する面積は1,426ヘクタールを予定しており、平成25年度までに約750ヘクタールの復旧を見込んでおります。
「災害復旧事業と農地整備事業を併せた事業」では、未被災農地140ヘクタールを含めた10地区、1,493ヘクタールで「災害復旧事業」と併せて、区画整理等の工事を進めています。
現在まで、10地区すべてが復興庁の復興交付金地区等として採択され、地区毎に進捗状況は異なりますが、平成27年からの営農再開に向け事業の推進を図っています。このうち、甚大な被害を受けた新地駅前に位置する「作田前(さくだまえ)地区」については安全祈願祭が行われ、本格的な工事に着工しております。

司会者

沿岸部の警戒区域は5月28日ですべて解除となりましたが、旧警戒区域の復旧予定についてお聞かせください。

担当者

はい。
旧警戒区域の南相馬市原町区の一部、小高区、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町のうち、今年度は南相馬市原町区と小高区の一部で被災状況の調査、災害査定を行い、来年度以降復旧作業に着手していきます。
その他の町については、避難指示区域の見直しや、土地利用計画を踏まえ、順次復旧を行っていきます。

司会者

農地の復旧にあたり、今後の課題を教えてください。

担当者

津波被災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で区域外へ避難されている方々も多く、集落でのコミニュケーション不足が懸念されますが、できるだけ多くの話し合いの機会を設け、農地の復旧・復興を進めております。その中で課題は主に次のことが挙げられます。
一つ目は、津波による堆積土砂の処理、利用方法。二つ目は、地震により沈下した農地への盛り土の確保、三つ目は、防災集団移転に伴う災害危険区域内の宅地などの土地利用、そして、災害防災林、太陽光パネルなどによる再生可能エネルギー基地、工業団地等の土地利用計画に伴う地権者の同意についてなどです。

司会者

津波被災農地についてお話を伺いましたが、着実に復旧がおこなわれ、営農再開に向かって進んでいることがわかりました。最後にラジオをお聞きの皆さんに、お伝えしたいことはありますか?

担当者

はい。
本年度も福島県の相双地域には全国各地から農業土木技術職員を派遣して頂いております。派遣職員の皆さんは、ご家族の元を離れ、福島県で復旧・復興のための業務を担当して頂いております。全国各地からのご支援のおかげで相双地域の復旧が着実に進んでおります。大変感謝しております。
私たちは、一日も早い営農再開を目指し、津波被災農地への復旧事業に取り組んでまいす。

司会者

ありがとうございました。
今朝は、「津波被災農地の復旧」について、福島県農林水産部農村基盤整備課寺島美里さんにお話を伺いました。