「水土里情報を活用したため池ハザードマップ作成」について
【平成26年3月29日ラジオ放送】
担当者:福島県土地改良事業団体連合会
総務企画部 企画指導課 課長 谷 孝樹
司会者:RFCアナウンサー
司会者
農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、「水土里(みどり)情報を活用したため池ハザードマップ作成について」お話しをうかがいたいと思います。お話しは水土里(みどり)ネット福島 総務企画部企画指導課長 谷 孝樹さんです。
最近、防災・減災の考え方から、ハザードマップという言葉をよく耳にしますが、概要についてお話ください。
担当者
はい。ハザードマップとは、自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したものです。予測される災害の発生地点、被害の拡大範囲および被害程度、さらには避難経路、避難場所などの情報が既存の地図上に図示されています。
ハザードマップを利用することにより、災害発生時に住民などは迅速・的確に避難を行うことができ、また二次災害発生予想箇所を避けることができるため、災害による被害の低減にあたり非常に有効となります。
日本では、1990年代より防災面でのソフト対策として作成が進められていますが、自然災害相手だけに発生地点や発生規模などの特定にまで及ばないものも多く、また予測を超える災害発生の際には必ずしも対応できない可能性もあります。掲載情報の取捨選択、見やすさ、情報が硬直化する危険性などの問題も合わせて試行錯誤が続いています。
2000年の有珠山噴火の際に、ハザードマップに従い住民・観光客や行政が避難した結果、人的被害が防がれたことで注目されました。
また、2011年3月11日に発生した東日本大震災の際、県内の農業用ため池も多くの被災を受け、一部のため池では、報道にあるように人的被害を防ぐことができなかった結果を受け、国や地方自治体は構造物で被害を防ぐよりも、人命を最優先に確保する避難対策としてハザードマップに注目しています。
司会者
そうすると、ハザードマップ作成が住民の避難対策として有効な手段となると思いますが、どういった方法で作成を行っていくのですか。
担当者
はい。まずは、ハザードマップ作成のために、浸水想定区域図を作成します。方法としては、ため池防災データベースより作成するため池の位置を特定します。
次に、氾濫シミュレーションを行うため、国土地理院より数値地図5メートルメッシュの
標高データ、水土里情報より航空写真・地形図を準備します。
基礎データがそろいましたら、農業工学研究所にて開発した簡易氾濫解析システムを使用してため池の堤体が破壊された場合の洪水の到達時間ごとの浸水想定区域図を作成します。
作成された浸水想定区域図は、あくまで5メートルの標高図からの想定区域となりますので、現地調査を行い、想定区域の修正を行って、周辺シミュレーションエリアの把握を行います。
司会者
それで、ほぼ作成完了となるわけですか。
担当者
いいえ、まだ作成の途中です。作成された浸水想定区域図は、5メートルメッシュでタイルのような形での出力となります。
これをGISソフトにて修正を行いハザードマップのひな形を作成します。
これに、連絡体制、避難経路などを追加して住民座談会等で検討を加えていきます。
検討結果を図面へ反映し修正することで、ハザードマップ作成が完了となります。
司会者
今回のテーマにあります水土里(みどり)情報を活用するとありますが、内容をお話ください。
担当者
はい、ハザードマップ作成における水土里情報の活用は、以下のとおりとなります。
まず、水土里情報により、県内の農地の航空写真、農地筆等の図面が統合整備されていること。
第2に、GPSモバイルと、ため池の位置や諸元の情報を取り込んであることから、事前確認と現地確認の効率化、迅速化が可能となること。
第3に簡易氾濫解析ソフトを利用した、氾濫シミュレーションのデータと水土里情報を結合させることで容易にハザードマップを作成できることとなります。
司会者
作成した実績等ございますか。
担当者
はい。本年度いくつかの市町村からの委託で作成をしております。また、来年においても作成を予定しています。
司会者
最後に、これからの方針についてお話いただけますか。
担当者
はい。東日本大震災では、数多くのため池が被災しています。ため池の下流には、人家や公共施設などが数多く存在しており、本県においては、ため池が決壊し人命まで失われる甚大な被害が発生しました。そのため、ため池の耐震化等ハード対策だけでなく、避難経路確保などのソフト対策が急務となっています。
そして、ハザードマップを効率的かつ迅速に作成し、ならびに従来のハザードマップを大幅に見直し、ハザードマップの策定過程に地域住民を参画させることで、地域特性の反映や、住民への周知、利活用の促進、さらには地域の防災力の向上に貢献していきたいと考えています。
司会者
今朝は、ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは、「水土里(みどり)情報を活用したため池ハザードマップ作成について」、お話しを伺いました。