土地改良区の複式簿記会計への移行について

【令和4年2月23日ラジオ放送】

担当者:福島県土地改良事業団体連合会 総務企画課 主幹兼課長補佐 坂内智広
司会者:RFCアナウンサー

司会者

おはようございます。
今朝の土地連だよりは、水土里ネット福島 総務企画部総務企画課 主幹兼課長補佐の
坂内 智広さんにお伺いします。
坂内さん、おはようございます。

担当者

おはようございます。
本日は、よろしくお願いします。

司会者よろしくお願いします。
今朝のお話は、「土地改良区の複式簿記会計への移行について」お話をお伺いします。
はじめに、土地改良区における簿記会計の現状並びに複式簿記会計移行の経緯について教えていただけますか。

担当者

はい。
これまで、土地改良区の会計処理は、法令上の定めがなく、昭和29年4月の農林省農地局長から通知された「土地改良区会計細則例」により、現金取引のみを記帳する単式
簿記の会計処理が行われてきました。
しかし、公益法人や企業の多くは、複式簿記による会計処理を導入している昨今の状況を踏まえ、土地改良区においても、組合員に対して事業等に要した費用の妥当性を分かりやすく説明する必要性や、土地改良区の財産・財務の状況が把握しにくいというような問題を解決するため、平成17年から複式簿記の導入を進める方向で検討が進められてきました。
そして、平成23年4月に、複式簿記による会計処理方法を定めた基準として、「土地改良区会計検査指導基準」及び「土地改良区会計基準」が、通知されました。
さらに、平成31年4月1日に施行された「土地改良法の一部を改正する法律」において、令和4年度から開始する事業年度から、これまでの財産目録、収支予算・決算書に加えて、貸借対照表の作成が義務付けられました。

司会者

長い間、検討されてきたのですね。

担当者

はい、この「会計基準」や今回の「土地改良法改正」では、土地改良施設を保有する土地改良区は貸借対照表の作成義務が生じており、作成に当たっては、複式簿記方式を導入しなければならないものと考えております。
そのため、他の法人同様に複式簿記へ移行するよう、土地改良区を指導・監督する農林水産省をはじめ、県及び当連合会が連携のもと推進している状況にあります。
そして、このような状況の中、土地改良区会計制度の動き、また土地改良区への様々な支援が行われています。

司会者

どのような会計制度の動きや支援があったのでしようか。

担当者

はい、まず、会計制度の動きですが、平成23年4月に、農林水産省から「土地改良区会計基準」の通知が発出され、平成26年6月には、総務省から全国の都道府県・市町村の公会計について、3年以内に複式会計に移行するように通知が発出されました。
また、平成30年6月1日に成立した「土地改良法の一部を改正する法律」では、会計に関する主な改正部分として、監事のうち1人以上は会員以外の監事とすることと、これまでの決算関係書類に、貸借対照表を作成することが追加されたところであり、これらの改正に併せまして、土地改良区の定款・規約のほかに、会計基準や会計細則、土地改良施設の資産評価マニュアルなどが公表されております。
次に、支援については、国の新たな補助事業として三点ほどありまして、一つ目としては、令和元年度より、「複式簿記導入促進特別研修」事業が始まり、今年は、来年度からの複式簿記方式導入に向けた最終年であることから、6月18日、10月7日、11月9日、11日、16日、25日の6回にわたり、会計基準の改正内容や、具体的な会計処理方法の研修会を、Web方式により実施しました。
コロナ禍により、関係者を集めて実施することはできませんでしたが、約200名の関係者がパソコンなどで視聴されたところです。

司会者

そうですか。6回も開催されたのですね。

担当者はい、土地改良施設維持管理適正化事業など、土地改良区特有の会計処理もあることから、研修回数を増やし、研修終了後も土地改良区の皆様がどのような内容だったか確認いただけるように、この研修動画をDVDに録画し、県内土地改良区に配布させていただきました。

司会者そうですか。録画DVDも配布されたのですね。

担当者はい、次ぎに二つ目としては、土地改良区会計に特化した会計ソフトの開発が、国主導で行われ、令和3年1月から、希望する土地改良区に提供が開始され、県内では、17の土地改良区で導入されております。
そして最後に三つ目として、当連合会における会計指導業務になります。
これは、当連合会職員が、要請のあった土地改良区を定期的に訪問し、不明な会計処理を現地にて指導するものであり、令和元年度と2年度に40の土地改良区を訪問指導して参りました。
令和3年度は、12月末現在において、60の土地改良区から要望があり、すでに100回を越えて県内各土地改良区を訪問させていただいているところであります。

司会者多くの土地改良区を訪問されているのですね。それでは次ぎに、複式簿記方式を導入することで、これまでの単式簿記の欠点がどの程度解消できるのか、具体的に教えて下さい。

担当者

はい、複式簿記にすることで、主に3つの内容が解消されます。
まず、一つ目は、現金以外の財産や負債の変動が統一の基準により記録され、これらの残高が基準日時点で、どの程度あるのかが把握できるようになります。
二つ目は、単式簿記会計では会計処理事務と財産管理に関する事務が分断されていることで発生している、記帳のミスが解消されます。
単式簿記会計では、取引を一つの勘定科目にしぼり記帳、整理する方法のため、財産管理は財産管理関係帳簿で取りまとめをし、その支払いが発生した場合には、資金関係の帳簿へ記帳しておりましたが、複式簿記では、この二つの書面が表裏一体となって取引状況を表すので、一括して記帳・転記することとなり、記帳日や金額の転記ミスが無くなります。
三つ目は、頭首工や水路などの土地改良施設を減価償却することによって不明だった改修コストが容易に把握できるようになります。
この把握によって、受益者から徴収する賦課基準を算定根拠として、数年後の改修に必要となる資金が、いくら必要であるかを説明できるとともに、単年度で資金調達ができない場合、事前に積立てる必要性を容易に説明できるようになります。

司会者

なるほど、複式簿記にすることで土地改良区の状況が、受益者などに説明が容易にできる、ということが分かりました。
それでは、最後に県内の土地改良区で複式簿記を導入しているところは、ありますか?

担当者

はい、令和3年12月末日現在ではありますが、県内85改良区のうち、10の改良区で導入されております。
当会としても、県内多くの土地改良区が、複式簿記に移行できるよう、今後も支援・協力をしていきたいと思っております。

司会者

ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは「土地改良区の複式簿記会計への移行について」、お話しを伺いました。