鮫川堰土地改良区の紹介について
【令和7年3月27日】
担当者:鮫川堰土地改良区 事務局長 狩野 聡史
司会者:rfcアナウンサー
司会者おはようございます。「農家の皆さん」の時間です。今朝は、土地連だよりをお送りしましょう。 お話は、鮫川堰(さめがわぜき)土地改良区事務局長の狩野聡史(かりのさとし)さんです。 狩野さん、おはようございます。
担当者おはようございます。よろしくお願いします。
司会者今朝のお話は、鮫川堰土地改良区について、ご紹介いたします。 まず、鮫川堰土地改良区について、ご説明いただけますか。
担当者はい、私ども鮫川堰土地改良区は、いわき市の南部に位置し、阿武隈川山系に水源がある鮫川の水を遠野町滝字柿ノ沢で取水し、中間農業地域の遠野町、大規模反別の渡辺町を通り、都市的地域の小名浜までの受益地を灌漑しており、これらの灌漑施設の維持管理を主体とした土地改良区です。前身の鮫川堰普通水利組合が発足されたのが明治31年なので、今年で設立127年の組合になります。
司会者灌漑施設の維持管理を行っているとの事ですが、そもそもどうして、灌漑施設が作られたのですか。
担当者江戸の頃より、小名浜は平坦で土地が肥えており、地域屈指の穀倉地帯として知られていました。 しかし、海が近いため地下水の塩分濃度が高く、さらに近隣の河川の水量が乏しいなど、用水には恵まれなかったため、土地の利を生かしきれず、干ばつに見舞われることが多かったそうです。この厳しい現状を打開すべく、江戸時代に先駆者の鈴木定八という方が、小名浜よりはるか遠くに流れている鮫川の水を利用しようと、私財を投げ売って40年以上に亘り水路の開削を計画しました。その後、時代が明治になり、定八氏の熱い想いがやっと行政や地域を動かし、最初の水路が作られました。
司会者定八さんの並々ならぬ情熱により水路が開削されたのですね。
担当者はい。しかし、残念な事に定八氏は水路工事開始目前で他界しました。さらに運悪く、完成した水路も、通水直後の台風豪雨により崩壊し、当時の組合には壊れた水路を改修するだけの余力がなく、多額の借金だけが残ったそうです。 その後、新たな先人の力により昭和8年に水路復活の動きが県営事業として開始され、現在の水路の原型が出来あがりました。最初の通水から実に36年を経て、やっと小名浜の地に用水が流れました。 我々の事務所には明治時代の資料も現存しており、それらの資料を見ただけでも、苦労の連続であった組合の歴史の重みを感じ、職員としても現在当然のように水路に水が流れていることが、当たり前ではないという事を改めて実感し、身が引き締まる思いです。
司会者幾多の困難を乗り越えて今の鮫川堰があるのですね。 では、鮫川堰の特徴や施設について教えてください。
担当者鮫川堰では、幹線水路26km、支線水路26km、合計52knの水路の維持管理を行っています。特徴としては、ポンプなどを使用せず、取水口から末端水路まで自然流下で水が流れているところです。また、取水口が遠く山間にあるため、川の下を通るサイフォンと呼ばれる施設が6か所、水路橋が5か所、水路トンネルが約40か所もあります。現在の水路の大部分は、昭和50年当時に県営事業により改修を行いましたが、一部大がかりなサイフォン等は、昭和14年に造成したものをそのまま使用しております。 さらに当改良区の水路は、農業用水だけではなく、水利権を取得している水道局や工場、レジャー施設とも水路を共用しているため、農繫期以外にも通年で水を流しており、いわき市の飲料水、工業、観光業を下支えしております。
司会者施設の管理だけではなく、地域産業とも密接な関係を結んでいるのですね。では、今現在はどんな取り組みを行っていますか。
担当者先ほどお話したように、当改良区の水路の中には、造成から80年以上経過している施設も現役で活躍しております。当時の技術力の高さに驚嘆する一方で、コンクリートの耐用年数等を考えると長期的に使用していくことは難しいと感じております。そこで、今後の管理や修繕を計画するため、令和5年から7年にかけて施設の機能診断事業を活用し、水路の状態調査を行っております。 また、平成27年から29年にかけて行った同様の機能診断事業では、水路トンネル内にて崩落個所が見つかりました。今後水路内が閉塞する可能性が極めて高いとのことから、組合が行う造成事業としては、50年ぶりに当該トンネルの改修案が県営事業として採択され、令和8年の本工事に向けて動きだしております。
司会者正に直近で大きな改修事業が動きだしているのですね。では、最後にお話ししたいことはありますか。
担当者鮫川堰の水路の周辺では、一部都市化、住宅化が進み、用水路が何に使われているか分からない方も増えてきております。各用水路には、ゴミを取る設備のスクリーンが設置されておりますが、住宅地にはスクリーンのゴミ回収に協力してくれる農家の方もなく、近年このスクリーンに溜まる生活ゴミの処理に大変苦慮しております。用水路の水は、地域の生活に密接しておりますので、水路内にゴミを捨てないようにお願いします。
司会者ありがとうございました。今朝は、鮫川堰土地改良区 狩野聡史さんにお話しを伺いました。
担当者ありがとうございました。