農村地域の環境について
【令和7年4月30日】
担当者:福島県農林水産部 農村計画課 技師 辺見 将斗
司会者:rfcアナウンサー
司会者農家の皆さん、おはようございます。今朝のラジオ「農家のみなさんへ土地連だより」は、福島県農村計画課より、辺見将斗(へんみまさと)さんにお越しいただいています。よろしくお願いします。
担当者おはようございます。本日はよろしくお願いします。
司会者辺見さん。本日はどのようなお話を聞かせてくれるのでしょうか?
担当者本日、私からは「農村地域の環境について」お話させていただきます。本題に入る前に、まず私たちの仕事について、紹介いたします。私たちは、農業農村整備事業と呼ばれる、農業の生産性の向上を図るための水田や畑の整備、農産物などを運搬するための農業用道路の整備、お米作りに必要な農業用水を確保するためのダムや堰、ため池の改修工事などを行っています。簡単にいいますと農業の基盤造りを行っています。
司会者「農業農村整備事業」。辺見さんは、農業を支えるための重要なお仕事をされているんですね。
担当者ありがとうございます。農業農村整備事業の推進にあたっては、環境との調和も重要視されています。突然ですが、福島県が環境との調和を目指して行っている取組についてご存じでしょうか。
司会者いいえ。どのようなことを行っているのでしょうか。
担当者福島県では、自然環境の保全等に配慮した農業農村整備事業を実施するにあたり、「福島県農村整備環境技術検討会」というものを設置しています。この検討会は、農業農村整備または自然環境等に関する学識経験を有している6名の委員で構成されており、工事を行う際に、近傍に生息している動植物への配慮対策や、農村景観への配慮など、環境に配慮した取組みに対して意見交換を行うとともに、技術的な助言等を受けています。また、農村地域の環境について、様々な取り組みを検討しており、昨年度は3回開催しました。
司会者工事を行うにあたり、有識者の方から環境との調和に関する意見をいただくわけですね。
担当者そのとおりです。この「福島県農村整備環境技術検討会」では、実際にこれから工事を行う地区や工事が完了した地区に行き、どのような生物が生息しているか調査も行っているんですよ。
司会者そうなんですね。農村地域には、どんな生物がいるんですか。
担当者水田や畑、ため池などの農村地域は、生物にとって暮らしやすい環境が整っているので、様々な生物がいます。トンボやバッタなどの昆虫、カエルやイモリなどの両生類、水辺にはメダカやザリガニ、もちろん多くの植物も生えています。
司会者農村地域は、自然がいっぱいですから多くの生物が暮らしているんですね。
担当者そうですね。しかし、土地の開発や外来種の持ち込み、地球温暖化や気候変動の影響などにより農村地域の生物は減少傾向にあります。それらの要因により、個体数が減少したり、生息地が限定されている「絶滅危惧種」と呼ばれる生物が増えています。有名な絶滅危惧種ですと沖縄県に生息するイリオモテヤマネコや新潟県に生息するトキなどがいますね。
司会者福島県にも絶滅危惧種はいるんでしょうか。
担当者はい。福島県にも多くの絶滅危惧種がおり、福島県内の絶滅のおそれのある生き物をリストにまとめた「ふくしまレッドリスト」というものがあります。掲載されている野生動植物は1,450種もいて、野生動植物を絶滅させないためには、絶滅のおそれのある生き物の現状を的確に把握し、そのための対策をとり、理解を深める必要があります。
司会者1,450種もの動植物が絶滅の危機にあるのですね。生物の絶滅は、私たちの生活にも影響があるのでしょうか。
担当者関係ないと思われがちですが、私たちの生活に影響があります。食べ物や薬、衣料など、私たちはさまざまな場面で生物の恩恵を受けており、そのおかげで現在の生活を送ることができています。ある種が絶滅すると、連鎖的に他の種も絶滅し、結果として、人間が地球上で生きていくのが困難なほどに大量絶滅が発生してしまう可能性があります。「ミツバチがこの世からいなくなったら、人間は4年後には生きられなくなる」という言葉はご存じでしょうか。これは相対性理論で有名な物理学者アルベルト・アインシュタインの言葉です。これは、ミツバチは野菜や果物から花粉を集める際に、それらの受粉を手助けしており、ミツバチが絶滅すると受粉効率が大幅に低下して、現在の食料生産に大きなダメージがあると考えられることに起因しています。同様に、他の生物種がいなくなることで人類が受ける環境の変化は、想定しきれません。
司会者私たち人間は、多種多様な生物の中で生きているいうことが再確認できました。私たちと生物は密接な関係性があるのですね。
担当者そうですね。生物との関わりについて再確認していただきましたが、私たちは、希少な動植物の生育・生息地でもある農村地域の環境を守り続ける使命があります。そのためにも、「福島県農村整備環境技術検討会」は重要な役割を担っています。
司会者農村地域の環境を守るとは壮大なテーマである印象を受けます。よろしければ、農業農村整備事業で行っている環境配慮への取り組みを教えていただけませんか。
担当者はい、もちろんです。環境配慮への取組は「福島県農村整備環境技術検討会」で委員の方からその地区・現場に適した意見をいただきながら進めることとしています。まず紹介しますのは、ビオトープの設置です。ビオトープとは「生物の生息空間」を意味し、動植物が共生できる場所のことをいいます。ほ場整備等で水田や畑の区画を整理する中で、部分的に湿地などの水域を作り、動植物が生きやすい自然状態を創設しています。そのほかにも、転落した小動物がはい上がって脱出することができる水路を設置したり、河川においてダムや堰などの障害物から魚が遡上できるように魚道と呼ばれる魚の通り道を設置する取り組みも行っています。また、工事施工時は、低騒音低振動の使用や日常点検による水質汚濁や土砂流出防止などの取り組みをしています。
司会者たくさんの取り組みをされて、農村地域の環境を守っているのですね。今後も引き続き福島県の農村地域の環境を守ってください。
担当者任せてください。
司会者さて、そろそろお時間となってきましたが、辺見さんから農家のみなさんに向けて、他にお知らせしておくことはありますか?
担当者本日お話しさせていただいた「福島県農村整備環境技術検討会」について、今年公募委員を1名募集する予定となっています。県内在住の満20才以上の農村地域の自然環境保全に関心ある方が対象となっています。資格等は不要です。今後福島県のホームページで委員募集について掲載予定ですので、興味のある方はチェックをお願いします。
司会者本日の話を聞いて自然環境保全に興味を持ったのですが、私も応募できるんですか。
担当者もちろんです。
司会者私にも「福島県農村整備環境技術検討会」の委員になるチャンスがあるんですね。
今朝は「農村地域の環境について」福島県農村計画課の辺見将斗(へんみまさと)さんにお話を伺いました。ありがとうございました。
担当者ありがとうございました。