水田で取り組む防災!田んぼダムの推進について
【令和7年8月27日】
担当者:福島県農林水産部 農村振興課 丸山 眞典
司会者:rfcアナウンサー
司会者おはようございます。
今朝は、 「水田で取り組む防災!田んぼダムの推進について」と題して、福島県農林水産部 農村振興課 主査の丸山 眞典(まるやま しんすけ)さんにお話を伺います。よろしくお願いします。
担当者おはようございます。よろしくお願いします。
司会者本日のテーマは、「水田で取り組む防災!田んぼダムの推進について」ということですが、「田んぼダム」という言葉、なかなか聞き慣れない言葉ですが、どのような取組なのでしょうか?
担当者「田んぼダム」とは、水田の排水口に排水量を調整する器具を設置し、水田に降った雨水を時間をかけて排水します。
排水量を一時的に抑制することで、取組地域の周辺の農地や下流域における浸水被害リスクを軽減するための取組です。
司会者水田を活用して、地域の防災・減災に貢献する取組なのですね。取組方法について、もう少し詳しく教えてください。
担当者まず、水田がもともと持つ機能について、お話しします。水田は、食料を生産する本来の機能に加えて、景観の形成など多面的機能の一つとして、大雨の際に雨水を一時的に貯留し、時間をかけてゆっくりと下流に流すことで洪水被害を防止・軽減する役割を果たしています。
「田んぼダム」は、小さな穴の開いた調整板などの簡単な器具を水田の排水口にとりつけて流出量を抑え、水田により多くの雨水を貯留することで、下流での急激な水位上昇を抑え、浸水被害リスクの低減を図る取組です。
田んぼダムの取組は、平成14年に、新潟県の旧神林村(かみはやしむら)、現在の村上市で始まりました。下流域の集落から上流域の集落に呼びかけることで開始されたと言われています。
司会者「ダム」と聞くと、大規模な施設をイメージしていましたが、排水口に流出量を調整するための板を入れるだけなんですね。
担当者水田に降った雨を一時的に貯留する取組であり、排水路や河川から、水田に水を引き入れるものではありません。
また、大規模な施設を造成する必要がなく、比較的安価で、すぐに効果が発揮できることが大きな特徴であり、各地で取組が広がっています。
司会者取組が広がっているとのことですが、これまでに、どのくらいの水田で取り組まれているのですか?
担当者令和6年度末時点で、全国で約9万9千ヘクタール、福島県内では約820ヘクタールの水田で取り組まれています。
本県における「田んぼダム」の取組は、始まったばかりですので、できるだけ多くの地域で取り組んでいただけるよう推進しています。
司会者田んぼダムを推進するようになったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
担当者近年、大雨が頻発化しており、洪水や浸水被害が増加しています。気象庁が公表している「1時間降水量50mm以上の年間発生回数」によれば、この40年間のうちに1.5倍に増えています。
記憶に残るところですと、令和元年10月に発生した「台風19号等災害」では、県内における被害として、床上浸水8,783棟、床下浸水1,393棟、農地及び農業用施設の被害額は527億9千3百万円にも上りました。
現在、洪水・浸水被害への対策として、遊水池や河川堤防の建設など、従来の治水対策に加え、流域全体の自治体や企業、住民が協働して、水害の対策に取り組む「流域治水」を進めており、その一環である「田んぼダム」の取組を多くの方に知っていただき、普及拡大していくため推進活動を行っています。
司会者「田んぼダム」に取り組むことで、浸水被害が無くなるのですか?
担当者「田んぼダム」の取組で、洪水や浸水被害が全て解消されるわけではありません。
河川や遊水池の整備、雨水タンクの設置などのほか、洪水時に川や下水管を流れる水を減らすために、例えば、大雨の時は、お風呂や洗濯の水をできる限り流さないなど、みんなで、いろいろな取組を合わせ行うことが重要です。
司会者「田んぼダム」に取り組むことで、営農への影響はあるのでしょうか。
担当者大豆や小麦などの湛水の影響を受ける畑作物を作付けしている水田では、取り組むことはできません。
また、稲の背丈が低い時期や、中干し・落水時期など、高い水位で湛水しない時期もあると思いますので、適宜、田んぼダム用の堰板を外すなど、稲の生育を優先した水管理をしていただいて構いません。
なお、湛水可能な生育時期に、畦畔の高さまで雨水を貯めても、品質や収量に影響を与えることはありません。
司会者あくまで営農に影響のない範囲で、取組を継続することが重要なのですね。「田んぼダム」に取り組む場合、どのような準備が必要になるのでしょうか。
担当者まず、水が漏れないよう畦畔の畦塗り、必要に応じて嵩上げを行います。
次に、田んぼに、排水マスがもともとある場合、水位を調整するため、堰板を設置していると思いますが、この板に、排水量を調整するために穴をあけた堰板などを追加するだけで、取り組みを始めることができます。
田んぼに排水マスがない場合は、排水マスの設置が必要となりますが、田んぼダム用の排水マスも販売されています。それを田んぼの排水口に設置することで取り組むことができます。
具体的な製品の種類、設置方法等についてまとめた技術マニュアルが、福島県農村振興課ホームページでご覧になれます。「福島県 スペース 田んぼダム技術マニュアル」で検索してみてください。
司会者では実際に、「田んぼダム」に取り組もうとした時には、どのように進めていけば、よいのでしょうか。
取り組みたい農家個人が、各々取り組めばよいのでしょうか。
担当者「田んぼダム」の取組は、まとまった面積で、取り組むことで、より浸水被害を軽減する効果が期待できます。そのため、地域や集落、生産グループなどの組織で話し合い、できるだけ多くの皆様に取り組んでいただければと思います。
また、取組に先だち、取り組もうとする水田の畦畔や排水設備の状況の確認を行ってください。水を貯めるのに、畦畔の高さが十分にあるか、やせていないか、排水マスはどのような物が設置されているか確認しましょう。
さらに、排水量を調整するための方法や、必要な器具について、既製品を購入するのか、自作するのかなどの検討をお願いします。
器具購入や工事に対する助成制度もありますので、市町村や最寄りの県農林事務所農村整備部にご相談ください。
司会者「田んぼダム」の取組後において、何か注意点はありますか。
担当者排水量を調整する堰板は、基本的には設置したままにしておいてください。ただし、先ほどもお話ししたとおり、田植え直後や、中干し・落水時期など、湛水しない時期は田んぼダム用の堰板を外すなど、稲の生育を優先した水管理をしてください。
また、「田んぼダム」取組中は、排水マスや調整器具に破損がないか、排水口にゴミ等が詰まっていないかなどの確認が大切となります。
なお、これらは、雨が降り出す前に行っていただき、激しい雨が降り始めたら、危険ですので、くれぐれも見回り点検は控えるようにして下さい。
司会者ありがとうございます。
では最後に、「田んぼダム」の取組推進に向けてPRがあればお願いします。
担当者農村振興課では、田んぼダムの普及拡大に向けて、各種イベントでの田んぼダム実演模型の展示や、出前講座の開催、田んぼダムの取組を説明した動画を作成し、県農林水産部公式YouTubeチャンネルにおいて公開するなど、取組を推進しています。
田んぼダムについて興味を持った方、詳細を知りたい方は、農村振興課のHPをご覧ください。
司会者ありがとうございました。
地域が「田んぼダム」の恩恵を得るためには、地域で農業が持続的に営まれ、農地が健全に保全され、「田んぼダム」の取組が継続して行われる必要があります。
「田んぼダム」を通じて地域の農業や防災・減災への理解が深まり、地域住民や様々な関係者間の繋がりが強化され、地域の持続性と協働力が向上することを期待します。
みんなで、いろいろな取組を行うことによって、少しでも洪水・浸水被害を防ぐことが必要であること、その取組の1つとして、「田んぼダム」の取組があることが分かりました。
本日は、「水田で取り組む防災!田んぼダムの推進について」と題してお話しを伺いました。 丸山さんありがとうございました。
担当者ありがとうございました。