「農業水利施設の管理」について

【平成21年4月28日ラジオ放送】

担当者:福島県農林水産部 農地管理課 主任主査 高萩 勇雄
司会者:RFCアナウンサー

司会者

農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、農業水利施設の管理についてご紹介します。
お話は、福島県農林水産部農地管理課で農業水利施設の管理を担当していらっしゃいます高萩勇雄さんに伺います。
高萩さん、はじめに農業水利施設とはどのようなものをいうのでしょうか?

担当者

はい。
農業水利施設というのは、農業用水を貯めておくダム・ため池、河川から農業用水を取り入れるための堰、高台にある水田などに水を汲み上げるためのポンプ場、農地を洪水から守るための排水ポンプ場、水田に水を取り入れたり流したりする用排水路などのことをいいます。

司会者

その農業水利施設は、県内にどのくらいあるのですか?

担当者

はい。
ダム・ため池が一番多く約3千7百ありまして、その他の施設を合計すると約7千施設になります。
また、受益面積が100ヘクタール以上の基幹的な役割を果たしている用排水路は延長が約1千キロメートルにも及びます。
農家の皆さんにとっては、なくてはならない施設であり安定的な食料供給には欠かせない重要な社会資源であるといえると思います。
また、地域住民の方々にとってダム・ため池などは地域の憩いの場になっていることも多いと思います。

司会者

私たちのまわりには、安定的な農業のために必要な農業水利施設がとてもたくさんあるということですね。
それでは、これらの施設を維持管理していくうえでのどのように取り組んでいるのかお話をお願いします。

担当者

はい。
県内にあるたくさんの農業水利施設は、土地改良区や水利組合が管理しており造成してからかなりの歳月を経過している施設が多く、老朽化が進んでおりますが、厳しい財政状況から新しくする余裕がありません。
そこで私ども県は、いかに施設を長持ちさせ造成から次の造成までのトータルコストを低く抑えるための仕組みづくりを行いました。
管理者の方々が、それぞれの施設の実態を点検によって把握し、壊れてから直すのではなく壊れる前に計画的に予防保全的な整備補修をおこなうなどの対策を実施していくというものです。
これにより、施設をもっと長持ちさせて、施設の有効利用を図るというものです。

司会者

車に例えると、新車に買い換える余裕が無いので計画的に部品交換や手入れをしっかりおこなって、なるべく長く乗り続けるということですね。

担当者

はい。おっしゃる通りです。

司会者

さきほど7千施設の農業水利施設があるとおっしゃいましたが、たくさんの施設を点検するわけですね。
なにか、工夫されている点はあるのですか。

担当者

はい。これだけの数の施設を点検するわけですから、施設を管理されている方々はもとより地域の方々のご理解とご協力の必要だと考えています。
その施設点検にあたり地域住民や農業水利施設の役割を広く分かっていただくため毎年4月を「施設管理強化月間」に位置づけて、PRに努めています。
県内の農林事務所毎に施設見学会や学習会などを開催し、毎年地域の方々や子供たちの参加を得て好評を博しています。

司会者

楽しそうですね。いつ、どんなことをしているのでしょうか。

担当者

例えば、県南方部では4月5日に白河市で田町大堰の幹線水路の施設見学をあわせて清掃活動を実施しました。また、南会津町南郷地域では6月7日に「唐倉の里」施設学習会を開催する予定です。
その他の方部でもダムの見学会や水路の学習会・清掃活動を開催する予定となっております。
ラジオをお聞きの皆様でイベントに関心をお持ちの方は、県庁農地管理課もしくは、各農林事務所へお問い合わせいただければ幸いです。

司会者

そのほか、施設管理を担当しているうえでご苦労なさっている点はありますか。

担当者

はい。
これから、ますます暖かくなってきて、水に親しむ季節がやってくるわけですが毎年おきてしまう事故についてです。

司会者

どのような事故なのでしょうか。

担当者

はい。もっとも多いのは、水路やため池に転落してしまう事故です。
県内でも子供さんがため池に転落して亡くなる事故やため池の管理中農家の方が誤って転落し、亡くなる痛ましい事故がおきてしまい、とても残念なことです。

司会者

何か、注意するようなことはありますか。

担当者

はい。
まず、子供さんが水路やため池周りで遊んでいるのを見かけましたら、一言注意してあげてください。
また、これから農作業が本格化するわけですが、農家の皆さんもため池の管理の際はできるだけ複数の方々で行うといった注意が必要です。
管理者の皆様には、注意看板の設置や危険箇所への進入禁止の措置をとるなどの安全管理をお願いします。
さらに、万が一の事故に備えて保険に加入するなどの対策をお願いします。
集落の役員さんには、これらの施設を計画的に巡視や点検をしていただき、不備なところがないかどうか確認し、危険な箇所が発見された場合には最寄の市町村や土地改良区などに相談していただきたいと思います。

司会者

そのほかに何か、ありますか。

担当者

はい。
さきほど、地域住民の方々にとってダム・ため池などは憩いの場になっていることも多いと申し上げましたが、心無い人たちが捨てたゴミを拾うのは農家である管理者です。
最近は、農家の方々も高齢化に伴い施設管理に大変苦労しています。
ゴミは捨てずに持ち帰るようにしていただきたいものです。

司会者

ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは、農業水利施設の管理について、福島県農林水産部農地管理課で施設管理を担当しております高萩勇雄さんにお話を伺いました。