農業水利施設の管理について

【令和2年5月27日ラジオ放送】

担当者:福島県農林水産部農地管理課 主任主査 星 泰彦
司会者:RFCアナウンサー

司会者

農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、「農業水利施設の管理」について、福島県 農林水産部農地管理課の星泰彦さんにお話を伺います。
まず、「農業水利施設」とは、どのようなものか説明をお願いします。

担当者

皆さん、おはようございます。
ではまず、農業水利施設について説明します。農業水利施設というのは、水田や畑で使う水を供給したり、排水したりする施設です。例えば、農業用水を貯めておくダムやため池、川から水を取り入れるための堰やポンプ、水田に水を取り入れる用水路や降った雨を下流に流す排水路などがあります。
県内には、このような施設が約7,000箇所あり、水田や畑のかんがい用水を安定して供給し、農産物の品質と収量を確保するうえで、とても大切な役割を果たしています。また、農業以外にも防火用水や生活用水、雪を流すためにも活用され、私たちの生活に密接に関わっています。

司会者

それだけ多くの農業水利施設は、どのように管理されているのでしょうか?

担当者

農業水利施設は、市町村や土地改良区が管理していますが、多くは地元の水利組合や集落、関係する農家の方が、草刈りや土砂上げ、水門の操作などの日常的な管理を行っています。
県では、営農の準備が始まる4月を「施設管理強化月間」に位置づけて、管理者自身による農業水利施設の点検をお願いしています。
特に、ため池は、決壊した際の下流への影響が甚大であることから、梅雨時期を迎える前に、堤体の法面の崩落や、堤体からの水の染み出しがないか、洪水吐に流木が引っ掛かっていないかなど、今一度点検をお願いします。また、いつでも堤体の状況を確認できるよう、定期的な草刈りもお願いします。

司会者

ところで、ため池や水路での事故について報道されることがありますが、どのような状況で発生するのでしょうか?

担当者

ため池で遊んでいた子供や農業水利施設の見回りをしていた農家の方が、ため池や水路に転落して尊い命を落とすといった痛ましい事故が、残念ながら毎年のように発生しています。
その原因は、子供の場合、危険な場所だという認識がないまま、釣りなどの遊びで、ため池や水路に近づいてしまうことが考えられます。また、農業水利施設の見回り時の事故は、大雨洪水時に多く発生しており、足元がぬかるんだり、雨具を着ていることで普段のような身軽な動きができないことが重なり、増水した水路に転落してしまうと考えられます。

司会者

それらの事故を防ぐためには、どのような対策が必要ですか?

担当者

まず、ため池や水路で遊んでいる子供を見かけたら一声掛けることや、危険箇所について学校や地域で確認して、その情報を子供に教えて注意させるといった地域ぐるみの啓発活動が重要と考えます。
次に、農業水利施設の点検や見回りは大雨洪水時に行わないこと。どうしても必要な場合は、一人では行かず複数で実施するようにしてください。できる限りライフジャケットやヘルメットの着用も必要と思われます。

司会者

それでは、農業水利施設の管理者の皆さんが、事故を未然に防ぐためにはどのようなことをすればよいのでしょうか?

担当者

注意喚起の立看板の設置や地域の広報紙により危険箇所を周知したり、侵入防止あるいは転落防止用の柵を設置することも有効な手段だと思います。また、万一の事故に備えて保険に加入するなどの対策もお願いします。
農業水利施設を利用するための管理に加え、事故防止のために地域や関係機関と連携して安全面の管理を徹底するようお願いします。

司会者

しかし、柵の設置などの対策は、多額の費用がかかる場合があり、簡単にできるわけではありませんよね?

担当者学校の通学路や避難経路に隣接した農業用水路などでは、国の補助事業を活用して、転落防止柵の設置や水路の蓋掛けなどの安全対策を実施することができるケースもありますので、市町村や土地改良区、お近くの県の農林事務所農村整備部にお問い合わせください。

司会者ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは、「農業水利施設の管理」について、福島県 農林水産部農地管理課の星泰彦さんにお話を伺いました。