農地・農業用施設の災害復旧事業とため池ハザードマップについて
【令和2年8月26日ラジオ放送】
担当者:福島県農林水産部農村基盤整備課 技師 橋谷田 恵司
司会者:RFCアナウンサー
司会者
農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、「農地・農業用施設の災害復旧事業とため池ハザードマップ」について、福島県農林水産部 農村基盤整備課 橋谷田 恵司さんにお話しを伺います。よろしくお願いします。
担当者
おはようございます。よろしくお願いします。
司会者
まず、はじめに、農地・農業用施設の災害復旧事業とはどのようなものなのか教えてください。
担当者
はい。災害復旧事業は、一定の基準を超えた豪雨や地震などの自然現象で被害を受けた農地や農業用の用排水路などを、市町村等が事業主体となって復旧する事業です。復旧に必要な金額が1カ所あたり40万円以上になる場合、国の補助を受けることが可能です。なお、復旧費用が40万円未満であっても市町村が国の支援を受けられる制度があるため、農家の皆さんは被害の大小に関わらず、何らかの被害があった場合は市町村へご連絡ください。
司会者
今日のテーマは農地と農業用施設の災害復旧事業とのことですが、この場合の農業用施設とは具体的に何が該当しますか。
担当者
今回説明する農業用施設とは、具体的に農業用の水路やため池、農道などになります。
司会者
災害復旧事業の対象となる農業用施設には、農業用の水路やため池があるのですね。この事業を活用することでどんなメリットがあるのですか。
担当者
はい。復旧に必要な金額の一部について、国から補助を受けられることが最大のメリットです。国に復旧費用の一部を補助して頂ければ農家の皆さんの負担は軽減されます。また、令和元年東日本台風災害のように「激甚災害」に指定されると国からの補助率がかさ上げされるので、農家の皆さんの負担はさらに軽減されます。
司会者
災害復旧工事に着手するまでには、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
担当者
はい。国の補助を受けて災害復旧工事を行うには、まず復旧工事に関する計画を作成して、国の「災害査定」を受ける必要があります。
災害査定とは、国からの補助を受ける市町村等が、現地で復旧の方法や費用について国に説明し、審査を受けることをいいます。国の審査が通れば、必要な費用が確定します。その後、復旧工事の着工となります。
司会者
工事に着手するには、「災害査定」と呼ばれる国の審査を受ける必要があるんですね。
被害の発生から復旧工事に着工するまでには、どれくらいの期間がかかるのでしょうか。
担当者はい。査定を受けるためには、現地における被害状況の確認や復旧方針を作成したり、復旧工事に必要な費用を算定しなければならないので、その準備期間に通常であれば2~3ヶ月かかります。
災害査定後には、復旧工事を担当する施工業者の選定等の手続きがあるので実際に復旧工事に着工できるのは早くて被害発生から4~5ヶ月後になります。
なお、農家の皆さんが査定前に自力で復旧した場合は、国の補助対象とならない場合があるので、ご注意願います。
司会者復旧工事に着工するまでの手続きを早める方法もあるのでしょうか。
担当者国と事前に協議し、承認を得ることにより先ほど説明した「査定」を受ける前に復旧工事に着工できる「査定前着工制度」というものがあります。
通常は査定後に工事を発注するので、工事着工までに時間がかかってしまいますが、この制度を活用すると被災後、早期に工事着工することができるため、農地などの復旧が迅速に行われるメリットがあります。
次年度の営農に間に合わせるために早急な復旧工事が必要な場合に活用できる制度なので、農家の皆さんはご自分の農地や水源となる用水路などが被災し、早急な復旧が必要な場合は、ぜひ市町村に相談してみてください。
司会者いち早く復旧工事に着工できる制度もあることがわかり、安心しました。 これまで災害復旧事業について伺ってきました。
次も災害に関係することですが、「ため池ハザードマップ」についてお話を伺いたいと思います。
はじめに、ため池ハザードマップとはどのようなものなのか教えてください。
担当者はい。県内でも東日本大震災や昨年の令和元年東日本台風などの、地震や豪雨にたびたび見舞われており、ため池の被害も少なくはありません。近年頻発する自然災害により、万が一決壊した場合を想定して、迅速かつ安全に避難するため、それぞれのため池において、決壊により想定される浸水の範囲や、水深、到達時間、避難路、避難場所などを地図に明示したものが、ため池ハザードマップとなります。
司会者ハザードマップの作成は誰が行うのですか。
担当者はい。主に市町村が、地域住民の皆様と話し合いながら作成しています。地域住民の皆様がハザードマップ作成に参画することにより、防災・減災への意識が高まり、万が一の決壊時に自らの命を守ることにつながります。
司会者なるほど。県内ではため池ハザードマップはどのくらい作成されているのですか。
担当者はい。県内には約4,000箇所の農業用ため池があります。その中でも下流に家屋や公共施設等があり、人的被害のおそれがあるため池を「防災重点ため池」として位置付けており、それらのため池を中心に約900箇所のハザードマップが作成されております。
また、作成したハザードマップは、地域住民のみなさんに配布したり、市町村のホームページに掲載したりして、住民のみなさんへの周知を行っています。
司会者なるほど。ハザードマップは作成するだけでなく、住民が知っていることが大切なんですね。
ハザードマップにより緊急時の避難につながった事例はありますか。
担当者はい。今年の7月豪雨の際、ため池の水位が上昇したことから、ハザードマップを見ていた地域住民が市町村に連絡し、避難につながった事例がありました。
幸い被害はなかったのですが、これも、地域住民のみなさんの防災意識の高まりが、実際の避難につながったものととらえております。
司会者日頃からの防災意識が重要だということが分かりました。
今朝は、「農地・農業用施設にかかる災害復旧事業とため池ハザードマップ」について、福島県農林水産部 農村基盤整備課 橋谷田 恵司さんにお話しを伺いました。ありがとうございました。