所有者がわからない農地を利用できる制度があります

【令和5年10月31日】
担当者:福島県農林水産部 農村振興課 副主査 秋葉 未歩
司会者:rfcアナウンサー

司会者おはようございます。
今朝は、 「所有者がわからない農地を利用できる制度があります」と題して、福島県農林水産部 農村振興課 副主査の秋葉 未歩(あきば みほ)さんにお話を伺います。
よろしくお願いします。

担当者おはようございます。
よろしくお願いします。

司会者本日のテーマは、「所有者がわからない農地を利用できる制度があります」ということですが、「所有者がわからない農地」とは、どういう農地ですか?

担当者所有者がわからない農地とは、「相続未登記農地」とも言われており、登記簿を確認しても所有者が分からない農地、または所有者の所在が不明で、連絡が取れない農地のことです。
農地を相続したときに、登記簿の所有者を変更しなかったり、所有者の名前や住所が変わってしまったりしたときに、変更の手続きを行わなかったことで、こうした農地が発生してしまいます。

司会者所有者がわからない農地は、どうして問題になるんですか?

担当者まずは、管理されずに遊休農地となってしまう可能性が高まります。
また、所有者の意思を確認できないため、担い手へ農地を集積する上で、障害になっているとの指摘もあります。
農林水産省の調査によると、全国では農地全体の約2割が相続未登記農地、または、そのおそれがある農地となっています。
また、本県の相続未登記農地は、約3万6千haで、県全体の農地面積の4分の1と、大きな割合となっています。

司会者県全体の農地面積の4分の1を占めているとなると、とても高い割合に感じますね。

担当者例えば、担い手となる農業者が、農地を借り受けることとなり、近くの遊休農地とあわせて集積しようとした場合、通常であれば、その地区の農業委員に相談して、農地の所有者と調整のうえ、その農地を活用する流れになります。
しかし、所有者がわからない場合は、農地を借りたい人や農業委員は誰と調整すればいいのかわからなくなってしまいます。

司会者せっかく経営規模拡大を目指している意欲のある農家さんがいて、また、遊休化した農地の解消にもつながるのに、所有者がわからないことが原因で農地を借りることができないのはもったいないですよね。

担当者そうした問題を解決するため、所有者がわからない農地について、福島県農地中間管理機構が、農地を借りたい人に貸すことができる制度がありますのでご紹介します。

司会者その制度があれば、所有者がわからない農地も有効に活用できるということですね。
それでは、その制度で農地を借りるためには、どのような流れになるのか、詳しく教えて下さい。

担当者まず、農地を借りたい方は、各市町村の農業委員会へ相談します。
相談を受けた農業委員会では、農地の所有者に関する情報を収集します。
その結果、所有者がお亡くなりになっていて、かつ、何代にもわたって相続登記がなされていないなどにより、相続人がわからない、または、相続放棄されたため、所有者不在の場合、農業委員会では、その農地について、市町村のHPや掲示板等へ掲載し、2ヶ月間の公示を行います。

司会者公示をしても、所有者等が見つからなかった場合は、所有者がわからない農地となるわけですね。

担当者そのとおりです。
その後、農業委員会から、農地の所有者がわからなかったとの通知を受けた農地中間管理機構は、その農地を利用する権利を、農地を借りたい人に設定するため、県に申請を行います。
そして、県は、農地を利用する権利を、農地中間管理機構へ設定します。
それを受けて、農地中間管理機構は、農地を利用したい人へ、農地を貸し出します。

司会者農地を利用できるようになるまでには、いろいろな手続きが必要なんですね。
農地を利用する際に発生する利用料の設定やその支払いはどうなりますか?

担当者農地の利用料については、農地中間管理機構が、その周辺農地の地価や利用期間等をもとに決定します。
農地の利用者は、その農地の利用期間中に、農地中間管理機構に対して、利用料を支払うことになります。

司会者農地の利用期間により利用料が異なるとのことですが、利用期間はどのくらいまで設定できますか?

担当者令和5年4月に農地法が改正され、最大で40年間の利用権の設定ができるようになりました。

司会者最長で40年ですか。
一度この制度を使って、農地を利用する権利を設定すれば、長期間借りることができるんですね。
県内で、この制度を利用した実績はどのくらいありますか?

担当者令和5年1月に、県内で初めて、この制度を活用して、所有者がわからない農地を利用する権利が設定されました。
令和5年10月現在で、30筆、3haの利用権を設定し、農地が有効に活用されています。

司会者最後に、この制度を活用するにあたって、何か注意点などはありますか?

担当者この制度は、先ほどお話ししたとおり、所有者を探したり、所有者が不明であることを公示する等、様々な手続きがあるため、実際に農地を利用することができるまでに、1年近く要することもありますので、まずはお住まいの市町村の農業委員会に早めに相談されるようお願いします。

司会者農地への作付け時期を考慮して、時間に余裕を持って活用してほしいということですね。

担当者県内における直近の事例では、遊休化するおそれのある、所有者がわからない農地について、農業委員会が令和5年5月から2ヶ月間公示を行い、この10月に利用権が設定されました。
この農地は、これから畑の土作りを行い、来年春ににんじん等の野菜を作付けする計画となっています。
このように、本制度の活用により、地域の優良農地の遊休化を防いだり、遊休農地を解消できた事例が、県内でも増加傾向にあります。
まずは、地域の農業委員さんにご相談ください。

司会者この制度や事業の活用により、地域の遊休農地が活用されるようになるといいですね。
本日は、「所有者がわからない農地を利用できる制度があります」と題して伺いました。
秋葉さんありがとうございました。

担当者ありがとうございました。