鹿島町土地改良区の紹介について

【令和7年1月23日】
担当者:鹿島町土地改良区 事務局長 下田 万寿美
司会者:rfcアナウンサー

司会者おはようございます。「農家の皆さんへ」の時間です。
今朝は、土地連だより をお送りしましょう。お話は、鹿島町土地改良区 事務局長の下田万寿美さんです。
下田さん、おはようございます。

担当者おはようございます。

司会者今朝のお話は、鹿島町土地改良区についてご紹介いたします。まず、鹿島町土地改良区についてご説明いただけますか。

担当者はい、鹿島町土地改良区は、福島県浜通りの北部に位置する、南相馬市鹿島区にあり、農地の基盤整備や水管理を通じて、農業を支える公益的な組織です。昭和43年に6つの土地改良区が合併し、鹿島区全域の水田、約1,700haを管轄しています。農家の皆さんが安心して農業を続けられる環境を提供するため、日々活動しています。

司会者地域の特徴についても教えていただけますか。

担当者この地域には、長年にわたって幾度も農村復興策を実施してきた歴史があります。古くは江戸時代、天明・天保の大飢饉を契機に、幕末から二宮尊徳が主導した二宮仕法と呼ばれる数々の復興策が行われてきました。代表的な施設には、相双地区最大の『唐神ため池』や『七千石用水路』があります。特に『七千石用水路』は、真野川の上流を起点に太平洋まで、全長は10㎞、高低差僅か34.7mで用水供給を行っています。1mに付き2.3cmの自然勾配ですので、当時の高度な測量技術や土木技術を示す施設として、歴史的価値の観点でも高い評価を受けています。

司会者こうした歴史的施設が今も利用されているのですね。

担当者はい。現在も現役で利用されています。5つのため池に補水し、水田灌漑を行う施設として、鹿島区の約25%のエリアを賄う、地域には無くてはならない施設です。また、その後も農村復興策は継続しており、明治30年には南右田・南海老地区で53haの耕地整理が行われ、明治40年にも18地区で合計660haの耕地整理が、また昭和3年には北右田で100haの耕地整理が行われたという記録が残っています。戦後の大規模な事業としては、まず昭和43年に『県営鹿島第一地区』として約400haの基盤整備を行いました。続いて昭和49年には、『鹿島第二地区』で約1,200ha、更には平成16年に『寺内・上寺内・小池地区』で600haの整備を行っています。

司会者東日本大震災を経た、今の状況について教えていただけますか。

担当者震災では津波により鹿島区の水田の約3分の1が流失し、農地や農業施設、道路、建物が甚大な被害を受けました。ゼロからのスタートを余儀なくされ、さらに放射能の影響で平成26年度まではコメの作付けが制限されるなど、本当に厳しい状況でした。

司会者非常に困難な時期だったのですね。その後の復興はどのように進められたのでしょうか。

担当者平成25年から福島再生加速化交付金を活用した『県営ほ場整備事業』がスタートしました。この事業は、津波で失われた農地を新たに造成し、農業を再開するための環境を整えるもので、当初は津波被害の大きかった沿岸部を中心に進められました。現在では内陸部にも広がり、鹿島区全体の約75%、11地区、約1,350haが整備対象となっています。

司会者ほ場整備事業について、もう少し詳しく教えてください。

担当者はい、ほ場整備事業の目的は、農地の大型化や用排水の整備を通じて、農業経営の効率化や生産性の向上を図ることです。管理しやすい農地に転換することで、地域農業の持続可能性を高め、農村環境の保全や農業従事者の負担軽減を目指しています。具体的に言いますと、田んぼ1枚の面積は、従前では1,000㎡~2,000㎡だったものが、整備完了後は概ね6,000㎡、大きい地区では平均9,000㎡程度に大区画化し、用水路も、勾配の緩い地区は積極的にパイプライン化に取り組むことで、水の有効利用を図っています。
また、申請の手順ですが、事業の発起人は、地元の農家さんで、地区ごとに申請することになっています。そして事業が認可されると、地元の農家さんから選ばれた10人程度の委員会が立ち上がり、この委員会が事業の推進役となります。一方、実際の工事の施主は福島県で、委員会から出される様々な要望を踏まえて、道路・水路を含めた理想的な農地の整備を進めていくことになります。

司会者ほ場整備の中で、土地改良区の役割についても教えていただけますか。

担当者土地改良区の役割は主に2つあります。1つは、地元農家が組織する委員会の事務局として、工事の調整や不具合箇所の取りまとめを行い、事業主体である福島県と連携することです。もう1つの役割は、土地の権利変更手続き、いわゆる換地の業務です。換地では、従前の農地と換地後の農地について、不動産評価に基づく清算手続きまでを行います。

司会者ほ場整備を進める中でのご苦労についても教えてください。

担当者工事では、想定外の問題がたびたび発生します。例えば、大きな石がゴロゴロ出たり、水はけが悪い箇所の対応として暗渠排水工事が必要となったり、また、工事従事者の不足に直面し、工事の工程が計画通りに進まないこともあります。計画が遅れると、作付けを休む期間が長くなるなど、農家の皆さんの経営にも大きな影響が出ます。さらに、相続登記が、何代にもわたって行われていない土地の権利調整など、複雑な問題も存在します。

司会者地元の皆さんの協力が不可欠ですね。

担当者はい、地元の委員会の方々は基本的にボランティアで活動していただいており、5年から、長い地区では10年、長期間にわたって、地域農業の未来のためにご尽力いただいています。全体視点では理想的な農地整備を考える一方、個別の農家の皆さんの細かい要望を調整する大変な仕事ですので、その姿を見ると、本当に頭が下がる思いです。
現在行っているほ場整備事業も、今後3, 4年で事業完了のピークを迎えます。それまでは、我々も全力で各地区の事業をサポートしていきたいと考えています。

司会者本日はありがとうございました。