農業水利施設のストックマネジメントについて

【令和3年1月29日ラジオ放送】

担当者:福島県土地改良事業団体連合会 総務企画部企画指導課 課長 冨田 秀樹
司会者:RFCアナウンサー

司会者

農家の皆さん、おはようございます。
今朝の「土地連だより」は、「農業水利施設のストックマネジメント」についてお話をいただきたいと思います。お話は、福島県土地改良事業団体連合会 総務企画部 企画指導課 冨田秀樹 様にお伺いします。
はじめに、最近「ストックマネジメント」という言葉は良く聞きますが、「農業水利施設のストックマネジメント」とはどのようなものなのか、お聞きしたいと思います。

担当者

はい。本取り組みは、名前が長いので通常略して「ストマネ」と読んでおります。それでは早速ですが、「ストマネ」について説明したいと思います。
農業用施設である「ダム」、「ため池」、「頭首工」、「水路」、「揚水機場」、「排水機場」などは、農村地域が都市化・混住化するのに伴い、公益的・多面的な役割が益々大きくなってきております。そしてまた、今まで建設されてきた膨大な量の施設のことを「ストック」と呼びます。一方、施設の老朽化は益々進んでおり財源等の制約がある中で、適切に管理していくための補修・補強または更新等の施設整備が喫緊の課題となってきております。そのような課題を克服していく手法や管理していく手法を「マネジメント」と呼んでおります。併せてストック・マネジメントとなります。
そこで、今後は施設の機能がどのように低下していくのか、どのタイミングでどのような対策を行えば効果的・効率的に長寿命化が図れるのかを検討し、施設の機能保全を実施し長寿命化を図り、ライフサイクルコストを低減していくしくみを構築することが大切なのです。

司会者

私たちにとって必要不可欠な「食料」や、日常生活に密接に関わる「農業水利施設」つまり「農業インフラ」の長寿命化を図っていく大切なしくみなのですね。
それでは、具体的な「取り組み」や「内容」について教えて下さい。

担当者

はい。基幹的な農業水利施設(農業インフラ)の相当数が、戦後から高度成長期にかけて整備されてきたことから、老朽化が進行してきており、近年標準耐用年数を経過している基幹的な農業水利施設が全体の四分の一を占めております。この老朽化に伴って、突発事故の件数についても増加傾向で、施設の経年的な老化及び局部的な老化が事故の半数を占めております。現在施設に不具合が発生した後に対症療法的な対策を取っておりますが、今後は不具合が発生する前に対応することが求められます。
具体的には、
一つ目としては、施設の性能評価を行い、劣化の見通しを立てます。
二つ目としては、老朽化のリスク評価を行います。
三つ目としては、農業水利施設は複合施設で、水路等については延長も長く箇所毎に劣化程度が異なります。このため、箇所毎の劣化状態に応じた適時の対応を考えます。
四つ目として、具体的には色々な機能保全対策を想定して、コスト比較によって適切な対策を選択的に実施します。

司会者

つまり、効率的・経済的な施設の機能維持対策を検討し、更新時期を延伸するとともに維持管理や将来の更新費用を考慮し計画的な対策を実施するということですね。

担当者

はい、その通りです。
施設全体の現状を把握・評価し、中長期的な施設の状況を予測しながら、施設の劣化とリスクに応じた対策(時期・工法)を選定して長寿命化を図ることが最大のメリットと言えます。
従来ですと、施設が機能低下を起こした後に、新しい施設を再度建設しておりましたが、新技術の開発・導入によって予防保全的な対応が可能となってきております。また、農業水利施設の機能を安定的に発揮させるため、施設の健全度評価に基づく機能保全対策の推進、新技術の開発と現場への円滑な導入を推進し、適正な時期に適切な機能保全対策を実施することで、施設の長寿命化とライフサイクルコストの低減を図っていくことが大切です。
次に、ストックマネジメントの導入によってどのような効果が期待できるのかを、具体的に説明します。
効果としては、4つ挙げられると思います。
まず1つ目は「施設の安全性を確保して良好な施設状態の維持が可能となる」です。
これは適正な点検・調査によって農業水利施設の状況を把握し不具合の発生を未然に防ぐことができます。このことによって施設の安全性の確保及び良好な状態の維持が可能となります。日常の維持管理で情報等も無駄なく効率的に修繕・改修の計画に活かすことが大切です。
2つ目は、「施設全体のライフサイクルコストを低減できる」です。
施設については、良好な状態を維持しながら、施設全体のライフサイクルコストの低減を行うことが可能となります。
3つ目は、「適正かつ合理的な施設管理を実施することが可能となる」です。
これは劣化した施設に対して、リスク評価による優先順位を考慮した対策を行うことによって適正かつ合理的な施設管理が可能となります。

最後は「地元・地域の方や組合員の方々にわかりやすく説明できる」です。
将来行う事業の必要性について理解を得るためには、施設の状況や機能維持に関する情報を目に見える形でわかりやすく説明することが求められます。「施設管理が適正かつ合理的に行われていることを説明することが可能になる」といったメリットがあります。

農村地域における農業水利施設の整備補修にぜひ積極的に取り入れていただきたいと考えております。

司会者

農業水利施設の適切な維持管理に対応できる素晴らしいしくみであることが良く分かりました。
それでは、ストックマネジメント事業について相談したい場合には、どのようにすればよろしいでしょうか。

担当者

はい、農業水利施設に対する維持管理や修繕・改修・更新等に関する相談がございましたら、私ども「水土里ネット福島」までご相談いただければと思います。

司会者

今朝は、ありがとうございました。
今朝の「土地連だより」は、「農業水利施設のストックマネジメント」について、お話しを伺いました。