農業水利施設の管理について

【令和3年8月27日ラジオ放送】

担当者:福島県農林水産部農地管理課 技師 茂木 さやか
司会者:RFCアナウンサー

司会者

農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、「農業水利施設の管理」について、福島県 農林水産部農地管理課の茂木さやかさんにお話を伺います。
まず、「農業水利施設」とは、どのようなものか説明をお願いします。

担当者

皆さん、おはようございます。
農業水利施設は、水田や畑で使う水を供給したり、排水したりする施設のことです。例えば、農業用水を貯めておくダムやため池、川から水を取り入れるための堰やポンプ、水田に水を取り入れる用水路や降った雨を下流に流す排水路などがあります。
県内には、このような施設が約7,000箇所あり、水田や畑へ水を安定して供給し、農産物の品質と収量を確保するうえで、とても大切な役割を果たしています。また、農業以外にも防火用水や生活用水、雪を流すためにも活用され、私たちの生活に密接に関わっています。

司会者

7,000施設もあるのですね。それだけ多くの農業水利施設は、どのように管理されているのでしょうか?

担当者

主な農業水利施設は、市町村や土地改良区が管理していますが、多くは地元の水利組合や集落、関係する農家の方が、草刈りや土砂上げ、水門の操作などの日常的な管理を行っています。

司会者

そうですか。7,000施設もあると、維持管理も大変だと思いますが、施設の適切な維持管理に向けて何か取り組まれていることはありますか?

担当者

はい。
これまでも、県では、営農が始まる4月を「施設管理強化月間」に位置づけて、管理者自身による点検をお願いしているところです。また、重要な施設である農業用ダムや大規模ため池については、県職員などが施設管理者に同行して合同点検を行っています。
使用前にあらかじめ施設を点検しておくことで、故障や事故の発生を未然に防ぐ他、施設管理者に水利施設の機能、重要性を再認識してもらい、自主的な施設の維持管理などを促す効果があります。
また、ため池についてはこれまでも点検していたところですが、今年度から、防災重点農業用ため池については、市町村、土地改良区および管理者による定期点検を開始したところです。

司会者

施設を長く安全に使うためにも点検は重要ですね。ところで、防災重点農業用ため池とはどのようなため池ですか?

担当者

防災重点農業用ため池とは、例えば大雨などによりため池が決壊したときに想定される浸水区域内に住宅や公共施設などの重要な施設があるため池のことで、県内では1,414箇所のため池が位置づけられています。
まもなく本格的な台風シーズンを迎えますので、管理者の皆様につきましては、今一度、施設の確認をお願いいたします。

司会者

大雨の前に危険がないか確認することはとても重要ですね。
ちなみに、ため池を点検する際のポイントなどはありますか?

担当者点検ポイントとしては、堤体の法面に崩落や漏水、洪水吐内に流木などの障害物がないか確認することなどが挙げられます。
漏水の確認については、堤体下流の法面にシダ類や苔類が多く生えているなど、植生に変化がある場合は、その付近で漏水している可能性があります。特に法面からの漏水については、水量が増えていないか確認することが重要です。
また、堤体の形状については、法面が膨らんでいたり、上流側が浸食を受けていないかという点です。
なお、点検は、ため池の取水時の操作や草刈りなどの日常的な作業の時でかまわないので、可能な範囲で状況を確認し、場合によっては写真等の記録を残しておくと、細かな変化に気づきやすくなります。また、こまめに点検をすることで、重大事故を防ぐことにつながります。

司会者点検の記録は大切なのですね。
では、点検の結果、危険な箇所が確認された場合や、判断に迷う場合にはどのようにしたら良いでしょうか?

担当者はい。昨年度より、水土里ネット福島のなかに「福島県ため池サポートセンター」を設置し、ため池管理者からの相談を受け付けていますので、お困りの際は直接お問い合わせいただくか、または、お住まいの市町村へご相談ください。

司会者大きな災害につながる前に、早めに相談できるといいですね。
そのほかに災害を防ぐためにできる取り組みはあるでしょうか?

担当者はい。最近よく、流域治水という言葉を耳にするかと思いますが、ため池の水位が低い状態であれば、その空いている容量が雨の一時的な受け皿となり、水害の抑制につながります。
稲の花が咲く頃を過ぎると、農業用水の利用も少くなりますので、可能な限りため池の水位を落とすようお願いします。また、低水にすることで、普段見えない堤体の状態を確認することもでき、施設点検にも役立ちます。

司会者ため池の水位を落とすことで、見えない部分の堤体の状態を確認できる上、災害の抑制にもつながる、一石二鳥ですね。

担当者そうですね。昔は、毎年とか数年に一回、ため池の水を抜き、底にたまっている土を空気に触れさせる「池干し」の習慣がありました。これは、水質改善につながりますし、土砂を上げることで貯水量の回復にもなります。また、ため池で飼っていた鯉を貴重なタンパク源として食べるなどもしていましたので、もっとたくさんのメリットがありました。このため、今後、池干しを推進していきたいと考えているところです。

司会者ため池の管理が地域のイベントも兼ねていたのですね。地域にとってため池は宝物だったのでしょうね。
今朝の土地連だよりは、「農業水利施設の管理」について、福島県 農林水産部 農地管理課の茂木さやかさんにお話を伺いました。