関係人口で農村を元気に

【令和3年10月30日ラジオ放送】

担当者:福島県農林水産部農村振興課 主任主査 平野 晃史
司会者:RFCアナウンサー

司会者

おはようございます。
今朝は、「関係人口で農村を元気に」と題して、福島県農林水産部 農村振興課 主任主査の平野 晃史さんにお話を伺います。よろしくお願いします。

担当者

おはようございます。よろしくお願いします。

司会者

本日のテーマは、「関係人口で農村を元気に」ということですが、そもそも「関係人口」って何ですか?

担当者

はい。
「関係人口」というのは、まだ聞き慣れない言葉ですよね。
ある地域を考えたとき、その地域にはいろいろな関わり方をする人がいます。
例えば、観光で訪れる人、その地域出身の人、ボランティアで関わる人、お祖父さんお祖母さんがその地域に住んでいる人、その地域の産品が好きで購入する人、地域の外から移住してきた人、などです。
このように、地域にいろいろな関わりを持つ人のうち、単なる観光で訪れる人や、移住・定住をした人を除き、「何らかの形で継続的に地域に関わっている人」を関係人口といいます。

司会者

以前から、「交流人口」という言葉はありましたが、どう違うのでしょうか。

担当者

はい。
「交流人口」は、主に観光目的で地域を訪れる人たちのことを指しているのに対し、「関係人口」は、より地域への関心が高く、地域といろいろな関わり方をする人たち、と言われています。
一方で、田舎暮らしに憧れてはいるけれど、地域に「移住・定住」するというのはいろんなハードルが高いですよね。
「関係人口」は、気軽な「交流人口」とハードルの高い「定住人口」の間にあるいろいろな段階の人たちの総称、という言い方がされています。

司会者

いろいろな段階、というと、例えばどのようなことでしょうか。

担当者

はい。
例えば、地域の特産品を買う⇒地域へ寄付をする⇒地域を頻繁に訪問する⇒地域でのボランティア活動に参加する⇒週末は地域で過ごす二地域居住というような段階が考えられます。

司会者

他にはどのような人がいますか。

担当者はい。
先ほども申し上げましたが、その地域にルーツを持つ人や、仕事や就学で一時的にその地域に住んでいた人、なども関係人口の例として挙げられます。

司会者なるほど、観光で通り過ぎるだけでなく、ある程度地域への関心が深く、その地域と関わり続けている人たち、ということでしょうか。

担当者はい、そのとおりです。
関係人口は、その地域の「ファン」ということも出来るかもしれません。

司会者「関係人口で農村を元気に」とのことですが、具体的にはどのようなことを目指すのでしょうか。

担当者はい。
農村地域では、農業生産活動が継続して行われることによって、主食であるコメを始めとした食料が生産されていることはもちろんですが、大雨が降った際に洪水を防いだり、生き物の生息環境になったり、お祭りなどの伝統文化が残っていたりと、いろいろな役割を果たしていることはご存じだと思います。
これらをひとまとめにして農村の多面的機能といいます。
農村の多面的機能は、農村地域に人が住んで、農業生産活動をはじめとした農村地域ならではのなりわいが正常に営まれていることによって維持されているのですが、ご承知のとおり、農村地域では、過疎化や高齢化が著しく進んでおり、田畑や水路はもちろんのこと、農村の社会そのものの維持が難しくなってきているのが現状です。

司会者農村が維持できなくなってしまえば、農村の持つ多面的機能も発揮できなくなって、洪水が起こりやすくなったりすると、引いては都市部に住む私たちも困ることになってしまいますね。

担当者その通りです。
そのため、これまでは何とか農村からの人の流出を防ごうとしたり、都会から農村に憧れる人に移住してもらおうとしたりしてきましたが、効果が限られてきました。
そこで、対象を広げ、農村の「ファン」である関係人口に働きかけて、農村地域を応援してもらうことで活性化しようという発想に至ったわけです。

司会者では、県ではどのような取り組みを行うのでしょうか。

担当者

はい。
関係人口はその地域の「ファン」と言い換えることもできます。
「ファン」はその地域の魅力に惹かれて「ファン」になるわけなので、地域に何らかの魅力がなければそもそも「ファン」はできません。

司会者

そうですよね。

担当者

そのため、いくつかの段階を経てファンを増やしていくことを考えています。
まず、地域の魅力をその地域の住民自らが発見し、自分たちの地域に誇りを持てるようなお手伝いをします。
農村地域の人たちは、得てして「こんな田舎には何もない。」などと言いがちです。
よく言えば謙虚ですが、人に来てもらおうとしたときに、そのような地域に来たいと思う人はあまりいないと思います。
地域の中にいると「当たり前」のことであっても、外の人から見ると素晴らしい価値を持っていることもよくあります。
例えば、昔からある神社の狛犬が、実は有名な石工の作で、他の地域にはないようなユニークな構図だったり、生活用水に地下水を使っているような地域であれば、都会ではわざわざお金を出して買っている天然水を日常的に飲んでいることになります。
そういった日常の「当たり前」から、実は地域の自慢になるようなことを、地域の人たちに自覚してもらいます。

司会者

その次にはどのようなことをするのでしょうか。

担当者

その次の段階として、地域の課題を明確にしてもらい、地域の将来をどうしたいかを地域内で話し合ってもらいます。
そうすることで、地域全体としての意識をひとつにし、目指すべき方向に向かうにはどのようなことをしなければならないかを考えてもらいます。

司会者

地域に自慢できることがあれば、地域に対する愛着も湧いて、自分たちの地域をどうよくしていくかを真剣に考えたくなりますものね。

担当者

その通りですね。
「地域のお宝」が見つかったら、次に、「ファン」候補へのPRです。
せっかくのお宝も、地域の外へPRできなければ、まさに宝の持ち腐れですし、PRする対象も絞り込んで、効果的に行っていかなければなりません。
昨今のコロナ禍で、幸か不幸かテレワークやオンライン会議が普及したりして、必ずしも都会に暮らさなければ仕事にならないわけではない、ということが一般的な認識になりつつあります。
それならば、わざわざ混み合う都会に住まないで田舎に住もう、という意識が広がってきているとも言われています。
そういった方々に響くようなPRの仕方が重要だと思います。
PRがうまくいき、ファンになって貰えれば、実際に地域外の人たちとの体験交流などを継続的に行っていくことで、都市部の人たちに、農村地域と関わりを続けてもらい、将来的な農村地域の活性化につなげてもらえればと思います。
また、交流を継続していくためには、農村地域と外部の人たちを繋ぐ仕組みも必要になってきますが、これについてはまた別の機会があればお話ししたいと思います。

司会者

関係人口は、農村地域の活性化に大きな可能性を秘めているということが分かりました。
本日は、「関係人口で農村を元気に」と題して伺いました。
平野さんありがとうございました。