農業用ため池の保全と維持管理について

【令和4年5月18日】

担当者:福島県 農林水産部 農地管理課 長谷川雅俊
司会者:ラジオ福島アナウンサー

司会者農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、「農業用ため池の保全と維持管理」について、福島県 農林水産部 農地管理課の長谷川雅俊(はせがわまさとし)さんにお話を伺ます。
まず、「農業用ため池」とは、どのようなものか説明をお願いします。
担当者皆さん、おはようございます。
農業用ため池というのは、水田に使う水を貯めておく施設のことで、小さなダムといってもよいかもしれません。
稲作をする時に必要な水は、水田に直接降る雨と、山や川などから流れてくる水を利用して行いますが、水が豊富でないところでは、農業に利用する水を確保する施設「ため池」が必要となります。
ため池は、主に
・水を貯めるための堤体
これは土を盛り立てたもので河川でいう堤防の役目を果たすものです。
・大雨の時、貯めきれない水を堤体の下に流すための水路
これは洪水吐きと言います。
・また、水を水田に流すための取水施設
などから構成されています。
県内には、約4,000箇所の農業用ため池があります。
これらは、水田のかんがい用水を安定的に供給し、農作物の品質と収量を確保する上で、とても大切な施設となっています。
司会者4,000箇所もあるのですか。私たちのまわりには、たくさんのため池が存在しているということですね。そのようなたくさんのため池は、他にどのような機能を有しているのでしょうか。
担当者まず、農業用ため池は、作物を育てるための農業用水としての役割の他、洪水に対する調整機能を有しております。
気象庁によると、
・日本の年間降水量はあまり変わっていない。
・ただし、雨の降る日数が減っている。
・また、1時間に50mm以上(激しい雨)の雨の回数が増えている。
つまり、昔と比べて、雨の降り方が極端になってきているということです。
局地的大雨や集中豪雨といった、テレビ、ラジオなどでは「ゲリラ豪雨」という表現をしているものが多発するようになりました。
司会者よく報道されている言葉ですが、局地的大雨やゲリラ豪雨により、どのような被害が出ているのでしょうか。
担当者突然大量の雨が降りますので、町中ですと、低い道路が冠水すると車が動けなくなったり、床下、床上浸水などの被害が発生します。
農業に関することでは、水路から水があふれ土手が崩れたり、その土砂が道路をふさいだりします。
また、平成30年の西日本豪雨では、土石流により家屋等が流されたり、記憶に新しい令和元年東日本台風では、福島県内でも各地で河川が氾濫し、水田や畑に土砂が流れ込み作物が壊滅したり、想定以上のあま水がため池に流れ込み多くのため池で被害が発生しました。
司会者通常、ため池はどのように安全管理をなされているのでしょうか。
担当者比較的大きいため池は、市町村や土地改良区という組織で管理していますが、多くは、地元の水利組合や集落、それ以外は、数人の関係者で管理している場合が多いです。
ため池管理者には、ため池の大きさに関係なく、水を使い始める春先に点検をお願いしています。
たとえば、
・堤体にひび割れなどがないか
・堤体の法面が崩落していないか
・堤体下流の法面に水染みがないか、植生が変わっているところがないか。
・コンクリートで作られている洪水吐きにひび割れがないか。
・洪水吐きに引っかかるような流木がないか。
などです。
小さな流木でも、数が多いと重なり合って洪水吐きを塞いでしまう場合もありますので、事前に取り除くことが必要です。
また、いつでも堤体の状況が確認できるよう、定期的な草刈りも重要です。
草が茂っていると、水がしみ出していることなどを直ぐに発見できません。
なお、農業用ため池は、5月頃が営農へ向けて満水の時期となるため、今が点検を実施する良い時期かもしれません。
良好な状態で、安全な施設として永く使い続けるためには、このような管理をしっかり行うことが大切です。
司会者先ほど、平成30年の西日本豪雨や令和元年東日本台風で多くのため池に被害があったというお話がありましたが、ため池を管理していく上で、国や福島県ではどの様な取組を行っているのでしょうか。
担当者国は、平成30年の西日本豪雨を受けて、令和元年7月に「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」が施行され、ため池の届け出・管理に関すること、特定農業用ため池の指定、管理に関する義務などが盛り込まれました。
この法律に基づき、ため池の所有者を明確にするとともに行政以外の所有者は、届け出を提出していただくようになりました。
更に下流に住宅等がある重要なため池は、特定農業用ため池として指定を受けることとなります。
また、令和2年10月には、「防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法」が施行され、県は、「防災重点農業用ため池」を令和3年2月26日に指定し、ため池の改修工事や利用されなくなったため池の廃止工事などの防災工事を推進しています。
司会者ため池の安全を確保するために、防災重点農業用ため池への指定や、新しい法律が出来ているのですね。
担当者はい、そのとおりです。
普段、ため池は、桜の名所であったり、ヘラブナの釣り場として有名だったり、憩いの水辺空間です。
しかし、今年に入ってからも、子どもがため池周辺で遊んでいるときに転落し、命を落とすという、痛ましい事故がありました。
当然のことですが、農業にとって欠かせない施設である一方、たくさんの水を貯めていますので、万が一ということも考え、管理する側は、安全かつ適切に管理していく必要があり、県としても積極的に支援していきたいと考えております。
県では、農業用ため池の管理者の相談窓口として、福島県土地改良事業団体会内に「福島県ため池サポートセンター」を設置しております。
ため池サポートセンターでは、日常点検や保全管理に係る電話相談を受け付けておりますので、ご活用下さい。
また、ため池に関する研修会も開催しております。
ため池の下流に住んでいる皆さんは、それぞれのため池のハザードマップで、浸水区域などを把握するとともに、避難場所を確認しておくことが大切です。
今後とも、農業用ため池の維持管理にご協力とご理解いただきたいと思います。
司会者ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは、農業用ため池の保全と維持管理について、福島県農林水産部農地管理課で、ご担当の長谷川さんにお話を伺いました。