農業用ため池の維持管理について

【令和元年5月23日ラジオ放送】

担当者:福島県農林水産部農地管理課 主査 齋藤 秀晴

司会者:RFCアナウンサー

司会者

農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、農業用ため池の維持管理について、ご紹介します。
お話は、福島県農林水産部農地管理課の齋藤さんに伺います。
まず、農業用ため池とは、どういうものをいうのでしょうか。

担当者

皆さん、おはようございます。
農業用ため池というのは、水田に使う水を貯めておく施設のことで、小さなダムといってもよいかもしれません。
稲作をする時、水田に直接降る雨と、山や川などから流れてくる水が豊富なところでは、それだけで農業ができます。
しかし、そうでない所では、水が少ないため、その不足する分を蓄えるためのため池が必要ということです。
ため池は、主に
・水を貯めるための堤体
・大雨の時、貯めきれない水を堤体の下に流すための水路
これは洪水吐きと言います。
・また、水を水田に流すための取水施設

などから構成されています。
県内には、約3,800箇所があります。
これらは、水田のかんがい用水を安定的に供給し、農産物の品質と収量を確保する上で、とても大切な施設となっています。

司会者

3,800施設もあるのですかぁ。私たちのまわりには、たくさんのため池が存在しているということですね。このようなたくさんのため池は、他にどのような機能を有しているのでしょうか。

担当者

まず、ため池は水を貯める施設ですので、農業用水としての他、洪水に対する調整機能を有しております。

気象庁によると、
・日本の年間降水量はあまり変わっていない。
・ただし、雨の降る日数が減っている。
・また、1時間に50mm以上の雨の回数が増えている。
つまり、昔と比べて、雨の降り方のバラツキが多くなってきているということです。
局地的大雨や集中豪雨といった、テレビ、ラジオなどでは「ゲリラ豪雨」という表現をしているものが多発するようになりました。

司会者

良く報道されている言葉ですが、局地的大雨やゲリラ豪雨により、どのような被害が出ているのでしょうか。

担当者

突然大量の雨が降りますので、街中ですと、低い道路が冠水して車が動けなくなったり、床下、床上浸水などの被害が発生します。
農業に関することでは、水路から水があふれ、土手が崩れたり、その土砂が道路をふさいだりします。
また、昨年の西日本豪雨では、土石流により家屋等が流されたり、水田や畑に土砂が流れ込み、作物が壊滅したり、想定以上のあま水がため池に流れ込み、多くのため池で被害が発生しました。

司会者

通常、ため池はどのように安全管理をなされているのでしょうか。

担当者

比較的大きいため池は、市町村や土地改良区という組織で管理していますが、多くは、地元の水利組合や集落、それ以外は、数人の関係者で管理している場合が多いです。
ため池管理者には、ため池の大きさに関係なく、水を使い始める春先に点検をお願いしています。
たとえば
・堤体にひび割れなどがないか
・堤体の法面が崩落していないか
・堤体下流の法面に水染みがないか、植生が変わっているところがないか
・コンクリートで作られている洪水吐にひび割れがないか、
・洪水吐きに引っかかるような流木がないか
などです。

小さな流木でも、数が多いと重なり合って洪水吐を塞いでしまう場合もありますので、注意が必要です。

また、いつでも堤体の状況が確認できるよう、定期的な草刈りが必要です。草が茂っていると、水がしみ出していることなどを直ぐに発見できません。良好な状態で、安全な施設として永く使い続けるためには、このような管理をしっかり行うことが重要です。

司会者

先ほど、昨年の西日本豪雨で多くのため池で被害があったというお話がありましたが、ため池を管理していく上で、今後何か変わることがあるのでしょうか。

担当者

国は、昨年の西日本豪雨を受けて、「防災重点ため池」の見直しを行っています。従来は、貯水量が10万トンか、堤体の高さが10m以上などを指標として、県内ですと218箇所のため池を指定して、重点管理していました。このため池については、地震のよる耐性を計る調査や、防災ハザードマップを作成し地元に周知するなどの対応を取ってきました。

しかし、西日本豪雨では、そこまでの大きさでないため池が複数決壊し、下流家屋等に大量の水が流れ込むなどがおきました。
このため、ため池の大きさに加えて、貯水量が大きくなくとも、貯水量と住宅等までの距離を考慮して、防災重点ため池への追加指定を予定しています。
もう一つ、国は「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」を作り、先月4月の19日に施行されました。今までため池の管理に関する法律はありませんでしたので、大きな変更です。
主な内容は、ため池の届け出・管理に関すること、特定農業用ため池の指定、管理に関する義務などが盛り込まれています。このことで、管理者は適切な保全管理が義務付けられたことになります。
届け出などの具体的な手続きはこれからになりますが、随時、情報提供していきたいと思います。

司会者

ため池の安全を確保するために、防災重点ため池への指定や、新しい法律が出来るなどしているのですね。

担当者はい、そのとおりです。
普段のため池は、桜の名所であったり、ヘラブナの釣り場として有名だったり、憩いの水辺空間です。
当然のことですが、農業にとって欠かせない施設である一方、たくさんの水を貯めていますので、万が一という事も考え、管理する側は、安全に、適切に管理していく必要があり、県としても、積極的に支援していきたいと思います。
また、下流に住んでいる皆さんは、それぞれのため池のハザードマップで、浸水区域などを把握すると共に、避難場所を確認しておく事が大切です。
今後とも、農業用ため池の維持管理にご協力とご理解いただきたいと思います。

司会者ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは、農業用ため池の管理について、福島県農林水産部農地管理課で、ご担当の齋藤さんにお話を伺いました。