土地改良区の複式簿記会計への移行について

【令和元年11月28日ラジオ放送】

担当者:福島県土地改良事業団体連合会 総務企画部 総務課 課長補佐 齋藤 佳久

司会者:RFCアナウンサー

司会者

おはようございます。
今朝の土地連だよりは、水土里ネット福島 総務企画部 総務課 課長補佐 斎藤佳久さんにお伺いします。 斎藤さん、おはようございます。

担当者

おはようございます。
本日は、よろしくお願いします。

司会者

よろしくお願いします。
今朝のお話は、「土地改良区の複式簿記会計への移行について」お話をお伺いします。
はじめに、土地改良区における簿記会計の現状並びに複式簿記会計移行の経緯について教えていただけますか。

担当者

はい。
これまで、土地改良区の会計処理は、法令上の定めがなく、昭和29年4月の農林省農地局長から通知された「土地改良区会計細則例」により、現金取引のみを記帳する単式簿記の会計処理がおこなわれてきました。
しかし、公益法人や企業の多くは、複式簿記による会計処理を導入している昨今の状況を踏まえ、土地改良区におきましても、組合員に対して事業等に要した費用の妥当性を分かりやすく説明する必要性や、土地改良区の財産・財務の状況が把握しにくいというような問題を解決するため、平成17年から複式簿記の導入を進める方向で検討が進められてきました。
そして、平成23年4月に、複式簿記による会計処理方法を定めた基準として、「土地改良区会計検査指導基準」及び「土地改良区会計基準」が、通知されました。
さらに、平成31年4月1日に施行された「土地改良法の一部を改正する法律」において、令和4年度から開始する事業年度から、これまでの財産目録、収支予算・決算書に加えて、貸借対照表の作成が義務付けられました。

司会者

長い間、検討されてきたのですね。
では「会計基準」ができたことで、各土地改良区の会計処理が複式簿記にすべて、
変わったのですか。

担当者

いいえ、この「会計基準」や今回の「土地改良法改正」では、複式簿記と単式簿記のどちらか一方を、土地改良区が選択することに変わりはなく、従来の単式簿記会計の継続を認めてはおりますが、貸借対照表の作成義務化や、員外監事の導入などを踏まえますと、結果として複式簿記を導入することが必要であると考えております。
そのため、他の法人同様に複式簿記へ移行するよう、土地改良区を指導・監督する農林水産省をはじめ、県及び当連合会が連携のもと推進している状況にあります。
このような状況の中、土地改良区会計制度の動き、また土地改良区への様々な支援が行われています。

司会者

それでは、複式簿記にすることで、これまでの単式簿記の欠点がどの程度解消できるのか、具体的に教えて下さい。

担当者

はい、複式簿記にすることで、主に3つの内容が解消されます。
まず、一つ目は、現金以外の財産や負債の変動が統一の基準により記録され、これらの残高が基準日時点で、どの程度あるのかが把握できるようになります。
二つ目は、単式簿記会計では会計処理事務と財産管理に関する事務が分断されていることで発生している、記帳のミスが解消されます。
単式簿記会計では、取引を一つの勘定科目にしぼり記帳、整理する方法のため、財産管理は財産管理関係帳簿で取りまとめをし、その支払いが発生した場合には、資金関係の帳簿へ記帳しておりましたが、複式簿記では、この二つの書面が表裏一体となって取引状況を表すので、一括して記帳・転記することとなり、記帳日や金額の転記ミスが無くなります。
三つ目は、頭首工や水路などの土地改良施設を減価償却することによって不明だった改修コストが容易に把握できるようになります。
この把握によって、受益者から徴収する賦課基準を算定根拠として、数年後の改修に必要となる資金が、いくら必要であるかを説明できるとともに、単年度で資金調達ができない場合、事前に積立てる必要性を容易に説明できるようになります。

司会者

なるほど、複式簿記にすることで土地改良区の状況が、受益者などに説明が容易にできる、ということが分かりました。
そこで、最後に県内の土地改良区で複式簿記を導入しているところは、ありますか。

担当者はい、令和元年9月末日現在ではありますが、県内86改良区のうち、6つの改良区で導入されており、導入へ向けて検討している改良区も10改良区ほどありますので、複式簿記会計の導入が、増えてきている状況にあります。
当会としても、県内多くの土地改良区が、複式簿記に移行できるよう、今後も支援・協力をしていきたいと思っております。

司会者ありがとうございました。
今朝の土地連だよりは「土地改良区の複式簿記会計への移行について」、お話しを伺いました。