「農業集落排水事業の広域化・共同化」について

【令和4年8月30日】
担当者:福島県農林水産部 農村基盤整備課 副主査 山崎 貴大
司会者:rfcアナウンサー

司会者農家の皆さん、おはようございます。
今朝の土地連だよりは、「農業集落排水施設の広域化・共同化」について、福島県農林水産部 農村基盤整備課 山崎 貴大(やまざき たかひろ)さんにお話しを伺います。
よろしくお願いします。
担当者おはようございます。よろしくお願いします。
司会者まず、はじめに、農業集落排水施設とはどのようなものなのか教えてください。
担当者はい。
農業集落排水施設は、汚水処理施設の一つで、農村の集落形態に応じた比較的小規模な下水道処理施設のことを言います。
つまり、施設の処理区域内にあるご家庭の台所、お風呂、トイレなどからの生活排水やし尿などを管で集め、集めた汚水をきれいに浄化させている施設になります。
皆さまがお住まいの近くにも処理施設が整備されていることかと思います。
司会者小規模な下水道事業ということですが、農業集落排水施設ならではの特徴はなにかありますか。
担当者農業集落内で汚水処理を行うということで、農業用水の水質保全や、処理を行う際に発生した、微生物の死骸などを含んだ汚泥を堆肥化させることで、肥料として農地への還元を行っている場合があります。このため、それぞれの農村地域に適した処理区域や堆肥の利用計画を決めることができる点が、農業集落排水施設の特徴であるとともに、農村地域の資源循環型社会の構築にも貢献しているといえます。
司会者農業集落排水施設が、汚水処理施設のひとつであり、それぞれの農村地域のニーズにあった処理が行われていることがわかりました。さて、今回のテーマが、「農業集落排水施設の広域化・共同化」についてということですが、こちらはどのようなことを行うのでしょうか。
担当者はい。はじめに、広域化・共同化の説明を行う前に、農業集落排水施設には、現在大きく二つの課題があります。それは、「施設の老朽化」と「人口減少」です。一つ目の「施設の老朽化」ですが、県内でも、整備されてから20年以上経過している処理場が多くなってきています。そして、その多くが施設内の機器や接続させている管路の劣化が進んでおり、今後、処理機能の低下や急な故障につながる恐れがあるということです。二つ目の「人口減少」ですが、こちらは、各処理施設が整備された時よりも、集落内の人口の減少が進んでいる集落もあることから、機器の処理能力と必要としている人口に乖離が生じてしまっているということです。
この二つの課題を解決する時に、必要となってくるのが「広域化・共同化」という取り組みです。
司会者具体的にはどのようなことを行うのでしょうか。
担当者簡潔に言うと、各施設を1件ごとに対策を考えるのではなく、施設の能力や処理区域、処理人口について、複数の施設を広域的に見直しするということです。例えば、これまでは別々で処理を行っていた隣接する2つの集落排水処理区域及び処理施設があるとします。処理施設は両方とも整備から20年が経過していることから、先ほどの一つ目の課題である「施設の老朽化」を解決するために機器や管路の更新について検討をします。それと同時に、二つ目の課題の「人口減少」に伴い、現在の処理人口で、必要となる処理能力についても見直しも行います。
そこで、新たな提案として、2つの処理施設を管路で接続させて、一方の施設の機器のみを更新し、今後稼働させていくというような施設の統合・再編を行います。そうすることで、より一層の汚水処理の効率化が図られることになります。これは、維持管理費が両施設で低減されるという面もあり、皆さまの使用料単価の上昇をおさえることが期待できる場合があります。
司会者今まで、2つで別々で稼働していた処理施設が統合することで、更新に係る費用の削減だけではなく、その後の使用料単価にも関わってくることがわかりました。
担当者また、農業集落排水処理施設同士の統合以外にも、公共下水道や流域下水道など、隣接する都市部の処理区域との統合を行う場合なども考えられます。
また、施設そのものの統合だけではなく、維持管理業務のみを共同化することや、施設点検に係る業務の共同化なども含まれます。
司会者広域化・共同化について、多くの取り組みがあることがわかりました、そのような広域化・共同化を行うことにより、維持管理費の低減以外にも、なにかメリットはあるのでしょうか。
担当者現状、管理する市町村などにおいて、下水道業務に関わる職員数が少なくなっています。そのため、管理を必要とする処理施設が縮小されることで、管理労力の低減・効率化が図られ、下水道管理という面での信頼性の向上にもつながると考えております。また、維持管理・施設点検を共同で行っていることで、緊急時・災害時も連携した迅速な対応が期待できます。
司会者広域化・共同化に向けて、福島県ではどのようなことを行っているのでしょうか。
担当者はい。
県では、広域化・共同化に向けて平成30年度から、各市町村の下水道担当者や広域市町村組合などと複数回話し合いを行い、いろいろな観点から現状分析、施設同士の合意形成に向けた協議を進めてきました。
来年の令和5年3月には、今までの話し合い結果をもとに「広域化・共同化の計画」を策定することになっております。そして、令和5年度以降は、その策定された計画をもとに、それぞれの施設について、より具体的な検討、実際に施設の整備を行うことを予定しているところです。
司会者分かりました。
農業集落排水施設の広域化・共同化を推進することで、効率的な処理ができ、維持管理費の低減につながっていくことなどが分かりました。今後全県で、より一層の広域化・共同化が進んで行くことを期待しております。
今朝は、「農業集落排水施設の広域化・共同化」について、福島県農林水産部 農村基盤整備課 山崎 貴大さんにお話しを伺いました。
ありがとうございました。