「農山漁村地域力発掘支援モデル事業」について
二本松地域ふるさとづくり協議会
【平成21年12月24日ラジオ放送】
担当者:二本松地域ふるさとづくり協議会 佐藤 興一
司会者:RFCアナウンサー
司会者
農家の皆さん、おはようございます。
けさの土地連だよりは、「農山漁村地域力発掘支援モデル事業」について紹介します。
お話は、二本松市の活動組織、二本松地域ふるさとづくり協議会事務局の佐藤興一さんにお伺いします。
はじめに、農山漁村地域力発掘支援モデル事業とはどのような内容でしょうか。
担当者
この事業は「みんなで守り伝えよう!農山漁村(ふるさと)の資源(たから)」ということで、農山漁村を「ふるさと」と読み替えて、そこにある有形無形の地域資源を「たから」として、それを活用し地域づくりを行う人材を「地域力」として捉え、発掘し、その立ち上がりを支援していただくことで、持続可能で活力ある農山漁村の実現、農山漁村の活性化と自立を目指すものです。これはわたしたち地域協議会が、中心となって取り組んでいくものです。
司会者
農山漁村の活性化と自立が目的と伺いますが、もう少し具体的に教えてください。
担当者
「自立」とは、この事業を活用して、活動による利益、寄付や助成金等により活動経費を自前で確保する仕組みや、ボランティア等の労働力を継続的に確保する仕組み、そして定住人口や地域の若者の数が増え、今後も活動を継続して行う担い手を、継続的に送り出せる仕組みなどを作っていくことを想定しています。
この事業では、多様な主体で構成される地域協議会が、ステップ1として、まず、自分たちの地域の活性化とは何か、また、それを実現し、持続可能とするためには何を目標とし、地域のどのような資源を活用し、どのような活動を行うのかを、地域に関係するさまざまな方が知恵を出し合って「ふるさとづくり計画」を作成します。ステップ2として、作成したふるさとづくり計画に基づき、地域の力を結集して実際に活動を行い、毎年その結果について自ら評価・検証し、計画の見直しをかけながら国に報告します。必要に応じて、アドバイザーの助言などの支援もいただきます。ステップ3として、この事業の最終年である5年目に、今後の概ね5年間の活動計画を作成し、事業終了後5年間、その活動結果について国や市町村に報告し、事業終了後も引き続き国からの助言を得るというものです。
司会者
それでは、「二本松地域ふるさとづくり協議会」が取り組む地域の課題について教えてください。
担当者
わたしたちが事業に取り組む「龍泉寺・西谷(りゅうせんじ・にしたに)」地区は二本松市の市街地から北西約1キロメートルに位置し、県立霞ヶ城公園に隣接している所です。そこからは公園の桜並木や安達太良山が一望できます。この地域には旧奥州街道が通じており、奥州探題・畠山氏が支配していた時代には、西口の正門に当たる場所でもありました。また、市内でも随一の棚田が残り、ホタルやサワガニなども生息しています。さらに、この地域を通る二合田(にごうだ)用水は、元禄時代に安達太良山から18キロメートルにわたり引かれた水路で、現在もなお、かんがい用水をはじめ防火用水などとしても使用されているものです。
この地域の水田は、棚田特有の小区画・小面積のうえに傾斜地であるため、平地に比べて耕地条件が悪く、不利な状態となっています。有効な土地利用も図られず、農業所得も伸び悩んでおり、耕作者の高齢化等によって、遊休農地も点在するようになってきました。さらに、県立霞ヶ城公園の隣接地にありながら、公園の観光客を十分に誘客できていない現状にあります。
司会者
農業が伸び悩み、資源も生かされていないとのことですが、棚田以外の地域資源や、地域協議会の「ふるさとづくり計画」についてお聞きします。
担当者
この地域にある「龍泉寺」というお寺は、元応(げんおう)2年(1320年)に開山されたという古刹(こさつ)で、県の重要文化財に指定されている木造聖観音菩薩(しょうかんのんぼさつ)立像が、この寺の観音堂に安置されています。この龍泉寺には、ほかにも市指定の文化財がいくつかあり、この地域の歴史・伝統の文化的な核となっています。
わたしたちは、この「観音様」と「棚田」を生かし、「桜・菜の花・そばで魅力ある地域づくり」をふるさとづくりのテーマに、地元の二伊滝(にいたき)地区の住民の皆さん、龍泉寺、JAみちのく安達、福島県安達農業普及所、二本松市、そしてボランティアの皆さんがメンバーとなって、ふるさとづくり計画を策定しました。主な内容ですが、県立霞ヶ城公園の隣接地という立地条件を生かして、「棚田」の活用による桜、菜の花、そばなどの植裁による地域の景観づくりを進め、訪れた皆さんに、地場の農産物や山菜などを提供するための直売所の整備、そして龍泉寺で行われている観音祭礼などの歴史文化を継承していくことにより、活性化を図っていきます。
また、各種イベントも企画しており、昨年の12月31日の大みそかには除夜の鐘と併せて「キャンドルないと」と称して、龍泉寺の境内に実験的にキャンドルを並べ、多くの参加者でにぎわいました。今年の大みそかも先着順で熊の手、ミニ破魔矢を差し上げ、年越しそば、甘酒、みかんなどを皆さんに振る舞う予定です。また、境内を幻想的に照らし出す500個のキャンドルにもご注目ください。除夜の鐘の終了後には恒例となりましたお楽しみ抽選会を行いますので、どうぞ、家族おそろいで多数ご来場いただきたいと思います。
また、来年1月7日には、新しい正月を送る「左義長(さぎちょう)」、これは「どんど焼き」とも言いますが、予定しており、地域の伝統行事を引き続き行うことにしております。地区外の方も参加いただけるものと思います。
司会者
農業と地域資源が積極的に連携して地域情報を発信し、活性化を目指す事業ですが、今後の課題を伺います。
担当者
先日開催された行政刷新会議の「事業仕分け」におけるこのモデル事業の評決結果は「廃止又は自治体の判断に任せるという結果」となったところです。この結果をもって、即、本事業の廃止等が決定されたわけありませんが、地域コミュニティのきずなが深まり、ボランティアの皆さんとの交流も深まり始めた矢先での事業中断は、地域の実践活動の停止につながるもので、地域活性化に非常に悪影響を与えるおそれがあると考えます。
わたしたち協議会では、今年度以降も、自立に向けての直売施設の整備や、収穫祭の実施を計画しております。現在、地域資源を生かしたさまざまな事業による効果が現れている段階であり、今後もさらなる地域活性化の効果が期待されます。
また、この事業は平成24年度までの5年間実施を前提に計画されており、現時点での結果だけでなく、実施期間終了時にどれだけの効果が上げられるかを検証していただきたいと思います。
ぜひともこの事業を継続させていただきたいと強く要望をするものです。
司会者
ありがとうございました。
けさの土地連だよりは、農山漁村地域力発掘支援モデル事業について、「二本松地域ふるさとづくり協議会」事務局の佐藤興一さんにお話を伺いました。