「磐城小川江筋土地改良区の紹介について」

【令和6年1月24日】
担当者:磐城小川江筋土地改良区 事務局長 矢吹英信
司会者:rfcアナウンサー

司会者おはようございます。「農家の皆さんへ」の時間です。
今朝は、土地連だよりをお送りしましょう。
お話は、磐城小川江筋土地改良区 事務局長の矢吹英信さんです。
矢吹さん、おはようございます。

担当者おはようございます。よろしくお願いします。

司会者今朝のお話は、磐城小川江筋土地改良区についてご紹介いたします。
初めに、磐城小川江筋土地改良区について、ご説明いただけますか。

担当者はい、磐城小川江筋土地改良区は、いわき市小川町から四倉町まで流れる小川江筋の維持管理をメイン事業としております。
その他、現在3地区のほ場整備事業そして、5つの排水機場の維持管理業務を行なっております。

司会者続いて、小川江筋についてお聞かせいただけますか。

担当者はい。まず、江筋という言葉ですが、耳慣れない言葉だと思いますが、この地方では古くから農業用水路を江筋と呼んでいます。現在の小川江筋ですが、いわき市小川町の夏井川より取水し、四倉町の仁井田川にそそぐ、延長約26キロ、受益面積約900haの水路となっています。途中、平浄水場にも水を供給しており、いわき市民の大切な水道水としても利用されています。

司会者小川江筋の歴史についてお聞かせいただけますか?

担当者はい。小川江筋は、江戸時代の初期、平藩主内藤忠興公の時代に澤村勘兵衛勝為公により開削されました。当時、度重なる干ばつの影響を受けていたため、夏井川の水を利用して安定した農業用水の供給をするために開削されました。特に、慶安3年の干ばつが酷く、当時郡奉行であった、澤村公が管内の状況を見て、あまりのひどさに江筋開削を決心したと言われています。もう一つ新田開発をして藩政を強化する狙いもあったと思われます。

司会者江戸時代にこれだけの水路を開削するのは大変だったでしょうね?

担当者はい。工事は全て手作業で、鋤(すき)や鍬(くわ)で土を掘って、岩盤は鑿(のみ)で削ったそうです。測量の機械もなかったので夜提灯をともして高低差をはかったと言われています。
地域の農民が昼夜を問わず作業に当たり、大変苦労して約30年という歳月をかけて完成させました。

司会者小川江筋の歴史といわきの伝統芸能の「じゃんがら念仏踊り」には関係があるとお聞きしましたが。

担当者はい。そうなんです。いわき地方でお盆の時期に踊られている「じゃんがら念仏踊り」は澤村公の一周忌に初めて踊られたと言われています。澤村公は、志半ばで切腹しなければならなくなったのですが、その原因ははっきりしていないんです。江筋開削を決心したと言われる草野の光明寺で、澤村公の一周忌が行われることになり、澤村公に感謝した農民たちが、念仏踊りで霊を慰めたのが「じゃんがら念仏踊り」の始まりだと言われています。

司会者小川江筋の代表的な施設を教えていただけますか

担当者はい。何と言っても、夏井川にある頭首工の斜め堰が上げられます。現代の堰は河川の流れに対し直角に造られるのが原則ですが、斜め堰は取水口に向かって斜めに造られていて非常に効率よく取水することができます。江戸時代の治水、利水の技術を利用した堰で、現存する斜め堰でこれほど大規模なものは少なく、非常に珍しいものです。構造は、木の枠を並べ、その中に石を詰めた木工沈床という作りです。冬には白鳥が飛来して自然に調和した大変美しい堰になっています。

司会者この斜め堰の技術が意外なところで利用されているそうですが

担当者はい。江戸時代の日本の技術が遠くアフガニスタンで利用されています。永年アフガニスタンで難民支援をしていた中村哲さんという医師の方をご存知でしょうか?残念ながらアフガニスタンで2019年に凶弾で倒れた方ですが、医師でありながら用水路建設に取り組み、大変苦労されたのが頭首工建設だったそうです。そんな時、実家の福岡に帰った際に、近くの筑後川にある斜め堰を見て、その技術を取り入れたところ大変うまくいったそうです。そして、ついに用水路を完成させて、緑の大地がよみがえり、現地では砂漠の奇跡と言われているそうです。以前、小川江筋の斜め堰にも国連の方と元アフガニスタン大使の方が見学に来られて、今後のプロジェクトに活かしていきたいとお話しされていました。

司会者今後の磐城小川江筋土地改良区の取り組みについておしえてください

担当者小川江筋の水路は昭和33年から44年にかけて全線三面コンクリート化されましたが、古いところでは60年以上経過しており老朽化対策を進めています。県や市などの関係機関の協力をいただきながら事業を進めて行きたいと考えております。
また、改良区の大きな事業として、ほ場整備事業があります。現在3地区のほ場整備事業の推進を行っておりますので地元の方々と協力をして事業完了を目指していきたいと思います。
それから小学校へ職員が出向いての出前講座を行っています。これから担い手への農地集積が進んでいきますと農業に携わる人々も減少していきますので、子供たちに小川江筋の歴史と役割を知ってもらい、後世に引き継いで行ってもらうために、今後もこの事業を積極的に行っていきたいと考えております。

司会者今朝のお話しは、磐城小川江筋土地改良区の矢吹英信さんでした。ありがとうございました。